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六角の花   作者: フミ
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勝て!

「皆様方 このダンザを憐れと少しでも思うお心があったなら

しばらくの間ここに匿ってはくれませぬか」


ダンザはシラセ工房宿舎の玄関口で

鉄砲と三味線を目の前に二の字に置き両手をついている


「みんな頼むよ

顔の腫れが治るまでの間でいいんだ」


五人は笑顔で答えた

会ったばかりではあるがダンザという男に

屈強ながら放っておいたら捨て犬のようになってしまう危うさを感じていたのだろう

皆そういう人間の扱い方は充分承知していた

一年以上シジマ アキヨリと寝食を共にし深く関わってきたのだ


「良かったなダンザみんないいってよ」


「かたじけのうございます

鉄砲 三味線の他にネギの皮剥きが得意でございます

なんなりとお申し付けください」


「そうなんだよ

こいつネギの皮剥きだけ異常に上手いし早いんだ


しかし勢いだけで事に臨むと大変な目に会う

二人して顔を腫らして皆に会いに行ったらまた殴り合ったと思われるからな

腫れが引いてからにするべきだった」


マイが口を両手でおさえ

ただでさえクリッとした目をこれでもかと大きくして

視線を二つの不細工カボチャの間を行き来させた


「若様なんという軽口!

俺が機転を利かせて他人のフリして鉄砲と三味線を持って来たのが水の泡だ

ご家人には暴露てしまったではありませんか!」


「大丈夫だよ

みんな笑ってるじゃないか

マイはカマトトぶってるだけだよ」



「痛ててて

今日はなんて日だ

女だったら普通平手打ちだろ?

拳骨ってなんだよ」


大都市サカイとはいえアキヨリ達が住む蔵は夜となれば虫達が競い合って声を鳴らす

今夜の一等賞は


二階のアキヨリの部屋でアキヨリとゲンの横に転がる

アンドウ ダンザのイビキだ


「アギ…まだ…痛むか?」


「すまないゲン大丈夫だよ

新しい工房と窯はどうだった?」


「も、申し分ない

ただ土に慣れるまで し、しばらくかかる

でも新しい な、何かが出来ると思う」


「そうか しかしすまない手伝えなくて」


「い、戦になるのか?」


「ああ」


「俺達の為か?

お、俺知ってる ジョスイさんはアギの敵

ジョスイさんと仲良くしようとしてくれてるのも俺達の為か?!」


「それもある

だがそれだけじゃない


頭に来てるってのもある

このままナリカワに天下を取らせたら男じゃ無いってのもある


兄上の命がけで求めた平和ってのはこんなもんじゃ無い筈だ

普段威張りくさった侍が犠牲になるのはいい

しかし力の無い者が犠牲になった平和なんて平和じゃない


それとジョスイは信じられる人間だ

それは石頭の俺にも分かっている

だから…


なんだかめちゃくちゃだな言ってる事が」


「お、俺は嬉しい

いつもアギは真っ正面に向かい合ってくれる

こ、心をそのまま聞かせてくれる

だ、たから俺も言う

アギにはもう戦って欲しくない

お、俺達と一生陶芸家をやって欲しい」


そう言うとゲンは

ずっとアキヨリから預かりっ放しだったアキマサの脇差しを

横一文字にアキヨリに突き付けた


アキヨリは一瞬躊躇したが

すぐにゲンの真意を理解し脇差しを受け取った

ゲンの真意とは二つ

戦って欲しくない思いともう一つ

それは言葉に表された


「勝て!アキ!」


「おう!!」





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