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六角の花   作者: フミ
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ボッコボコ

「めでたいぞーめでたいぞー

ダンザ三味線を弾け!」


アキヨリは笛を構えた


「あ、忘れてた…」


「そういえば お前

いつも持ち歩いてる

鉄砲も三味線もどこに置いて来た?」


「こんな賑やかな所であんなもん

持ってブラブラしてたら頭がおかしいと思われると思って

ニザエモン殿が用意して下さった

長屋に置いて来たんですけど

ああ、忘れてた」


「何を忘れてたんだよ?」


「俺 みんなに若様を連れて帰るって出て来たんですよ」


「みんなって誰だ?!

もしかしてシジマ家の家臣達か?!」


「左様です

皆 ヒデサトに国元に追い帰される途中

若様が生きてて もうすぐサカイに来るから

サカイと若様に力を貸してくれって

ニザエモン殿の誘いを受けたみたいです

俺は行き倒れてたところを行商人の皆さんに助けてもらったんですが」


「どれくらい来てくれているんだ?!」


「俺も含めて二百二十四人です

皆 若いヤツらでアキマサ様のはからいで前線から離れて配置されたヤツらです

最前線で戦って生き残った歴々の方々も いたらしいんですが

もう戦えるような様じゃ無かったらしく

若様の事は伝えずコウズケに帰ってもらったと言ってました」


「そうか…」


「若様!行きましょう!

皆 待ってます!

俺達にはまだ命があって

まだ戦えるんです!

顔を上げて下さい!

これからです!これからなんです!」


「そうだなダンザお前の言う通りだ」


バチン バチン バチン バチン バチン!


アキヨリの背中を叩く五つの手のひらが

彼の顔を上げさせ拳に力を漲らせた


「ありがとう皆!

行ってくるよ!

アクヤー!」


バァァァン!


馬屋に続く開き戸が弾ける様に開き

主の気炎の乗り移った黒い怒涛が姿を現した


「おお!アクヤ久しぶりだな」


「行くぞ ダンザ振り落とされるなよ!」


「おう!」



いつだったかアキヨリがアクヤと走り去った時とは違い

五人の胸中に不安は無く頼もしさだけがあった

アキヨリは必ず帰って来る

揺るぎ無い信頼が絆があった


ビュュュュュ


ダンザの耳には蹄音より風切り音が渦巻いていた


「ダンザ」


「なんでしょうか若様」


「若様と呼ぶのはやめにしないか

元々俺は跡継ぎじゃないし

シジマ家では

俺は騎馬隊お前は鉄砲隊を率いる侍大将で同格だ

それに俺は今シラセ家の婿養子みたいなものだ」


「恐れ多いことを

我等にとって若様はアキマサ様の弟君というだけの お人では無いのです

もうこの問答はいたしません

若様は若様です」


「ではトウカは何と呼ぶ

間違っても様などつけて呼ぶなよ

俺が幼い頃 年長者達がそうしてくれたように先達として堂々と振舞ってくれよ」


「そうすればトウカ様は

若様のように成長して下さるでしょうか?」


「言った側から!」


「はっ!」


「くれぐれも頼んだぞ

シジマ家の跡継ぎはあくまで兄上の嫡男マサトラだ」


「ナリカワに打ち勝ち

奥方様を取り戻した暁には

マサトラ様達の待つワタラセ渓谷の隠れ里に共に参りましょう」


「ああ、きっとだ」


「おお!あれはアクヤではないか!」


町外れの長屋に続く細い路地に差し掛かった時アクヤの名を呼ぶ声があった


「やはりアクヤだ

おーい皆の者アクヤが来たぞー!」


長屋から洪水の如く退屈男達が出で

アクヤを取り囲んだ


「元気だったかアクヤ!」


「よしよし久しぶりだなアクヤ」


「あーアクヤ!」


誰もアキヨリに見向きもしない

だが一人みすぼらしい身なりながら折り目正しい男がアキヨリに向って声をかけた


「拙者フジオカ ヤスキヨと申す

アクヤは他人を絶対に乗せぬ忠義者

アキヨリ様の御縁者とお見受けいたす

拙者達は一刻も早くアキヨリ様にお会いいたしたく望んでおります

お教え下され

アキヨリ様は今どこに!」


「えーとー

ダンザ 名乗った方がいいかな?」


アキヨリは耳打ちした


「その為に来たのですぞ

声を聞けば皆 若様と分かります」


「そうだな

んっ!んっ!


多少姿が変わったがアキヨリだ

皆 苦労をかけた

今更現れた俺の不明を許してくれ」


「!」


「え?」


「アキヨリ様?…」


アキヨリは皆の視線に耐えられずに空を見上げた


「おいたわしい!さぞかし御苦労を重ねたので御座いましょう!

うううううう

しかしこのヤスキヨの目には

涼やかな目元

日輪の様でそれでいて艶やかな笑顔が今も焼き付いておりまする

姿形は変わってもアキヨリ様はアキヨリ様で御座る

ううう、ううう、」


「アキヨリ様ぁぁ!」


「うわああ!若殿ぅぅぅ」


「おいたわしや、おいたわしや!」


アキヨリの顔は真上を向いてしまった


「ダンザいきさつを話した方がいいかな?」


「なりません!

見たら分かるでしょうに

俺と殴り合ったなどと言われたら

俺の命がありませぬ!」


「そうだよね」



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