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六角の花   作者: フミ
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きゃたきゃたきゃたきゃた

「どうせ あのお二人の足には追い付けませんからな

我々はゆるりと参りましょう

行き先は分かっているのですからな

おや、まだおられますぞ?!

ギンザブロウさん

そのお背中の御仁はアキヨリ殿ですかな?」


ニザエモンの顔は破裂寸前の風船のようだ


「あい、アキヨリでし」


ギンザブロウはニヤニヤして答えず

代わりに背中の不細工カボチャが答えた


「そして そちらの方はもしかしてダンザさんですかな?」


「うい、アンドウでしゅ」


もう一つの不細工カボチャは右斜め前に不自然な角度で立ち

自分の名はアンドウだと言っているようだ


「お二方共少し見ない内に様子がガラッと変わられましたな

くっくっく…

あーっはっはっはっはっはっは!

もうだめだ!

あーっはっはっはっはっはっは!

後でアキヨリ殿には行き会わせると言っておいたではないかっくっくっく!

あーっはっはっはっはっはっは!」


ニザエモンは破裂した

キョウジヤも自分の脇腹を押さえる


「いやー失敗した急いで来るのだった

大体の想像はつくが

そうなった原因が見て見たかった

くぅっふっふっふっふっ!」


他の大旦那達も呼吸もままならないほど笑い転げている


「残念でござんしたね

くっくっく

二人共 手加減無しなんであっという間でござんしたよ

くっくっく

ぶわっはっはっはっは!

ふーふー!

それじゃおいら達は行きやすぜ

遅くなるといけねえ

この後 約状やら形式ばったことがあるんでござんしょうから」


「まあ 必要無いと儂は思うがね

この通り背中の御仁には命を繋いだ

猛者が沢山おいでだろうし

先程の普請においてのやり取りも見事でありましたからな

信用して間違いありますまい」


「そうですな

形式ばったことはジョスイ殿が戻られてからの方がよろしかろう」


大旦那達は同じ見解のようだ


「そうですかい

ダンザさん あんたも来るだろう?」


「うい」



半時後 三人は造船所のある高台から港を見下ろしていた


「ギンザブロウ殿ぷぅ

思ったより高所にあるのでしな」


「潮が満ちた時なんざ風向きなんかで

作業場に海水が入っちまって仕事になりゃしねえんで

こんな塩梅なんでさぁ」


「今ある貯水池はあれだけでしかな

ぷぅ」


「あれだけでごさんす

ここいらは井戸を掘っても塩水が出て来ちまうんで

ああいったもんが必要なんだが

絶えず山から水を引いてるんで貯水池はあれだけで充分なんでえ

ほら あの水道橋がそうでさぁ」


ギンザブロウの人差し指を辿り

アキヨリは石造りの水道橋を目にした


「あれは戦となったら破壊されるだろうな

いや 毒を流されるだろうか?っぷう

」


「そこでこんだけでけえ貯水池を増設すんでござんしょう?

しかし今の貯水池でも三月はもちやすぜ

台風やらで水道橋が全壊した場合

元通りにするのに三月はかかるんで

自ずとあの大きさにしたんでさあ


でも不自然なんは今の貯水池と新しい貯水池を何で繋がねえんですかね

用水路とも繋いでねえ

あたりめえの事だと書いて無いのかと思ったんですが

他のことは事細かに寸法まで指定してある

繋いじまってかまいませんかねえ

繋ぐどころか くっつけちまった方が作る方はやりやすいんですがねぇ」


「ぷぅー……高台…孤立した貯水池…

分かったぞ!」


「分かったんですかいジョスイさんのやろうとしてる事が

そりゃ一体なんでござんすか?!」


「分かったと言っても何と無くで御座るから

下手に拙者から言及しない方がよろしかろう

あくまでジョスイの指示通りに願いたい」


「あれっ?

くっくっくっくっく

急に喋り方がしっかりしやしたね

そんじゃあ

気になるが戦に関わる事だ

何でもかんでも耳を突っ込もうとは始めから思っちゃいませんぜ

あの ナンチャラ号を造船所に引っ張り込み次第着工しやすぜ


もう昼んなる

今日はこん位にしやしょうか

昨夜も遅かったんでごさんしょうし

何より足腰立つようになるまでは休んでくだせえよ」


「面目無い

そうさせて頂く

ギンザブロウ殿大変ご迷惑をお掛け致した」


「迷惑だなんて これっぽっちも思っちゃいませんぜ

本当に楽しかった

それじゃおいらは船大工達と段取りつけて来やすんで

ダンザさん ご主君の運搬よろしく」


「うい」


二つ縦に並んだ不細工カボチャが大通りを行く

行き交う人々は何事かと足を止め目を見張った


「ただいまー

友人を連れて来た」


「しゅつれいいたす

アンドウ ダンザともうず」


奥から赤ん坊を両脇に抱えたオタマは

ひっくり返りそうになったが母親の使命が既の所で踏み止まらせた


慣れ親しんだ人間の雰囲気というのは姿形が変わっても分かるものだ

アキヨリの雰囲気は感じている


オタマは上のカボチャと下のカボチャどちらがアキヨリなのかと交互に見比べ

一旦赤ん坊達を寝かして

半紙と筆を取り出し


上のカボチャには

(おかえり 何があったの)


下のカボチャには

(いらっしゃいませ オタマと申します)

と書いて見せた


「心配いらないよ

それよりイヨ姉様なんだが

ニザエモン殿の所にやっかいになるそうだよ」


オタマはにっこり笑い

(やっぱりね)

と書いて見せた


「なんだ 知ってたのか

皆の姿が見えないが」


(皆さっそくお仕事に行きました)


「そうか そりゃ良かった!

ダンザありがとうもう立てそうだ

下ろしてくれ」


「うい」


アキヨリは赤ん坊達に駆け寄り先程オタマがそうしていたように

両脇に抱えダンザに見せた


「こっちがオタマの息子

名前はまだ無い

オタマ 早く名付けてやれよ

でこっちはトウカ

俺の息子だ」


「ご!ご!ご!ご子息!

似てる!似ております!

目鼻立ちが若様にそっくりです!


ぐぼおおおおおおおお!

お見知り置きを ダンザでございます

百発億中 鉄砲のダンザでございます!

ベロベロバァーベロベロバァー」


「きゃたきゃたきゃたきゃたきゃたきゃた!」


トウカは火が付いたように笑い出し

オタマの子はキョトンとしている


「うおおおおお!

笑った!トウカが初めて笑った!

ダンザでかした!

俺もやる

ベロベロバァーベロベロバァー」


「きゃたきゃたきゃたきゃたきゃた!」


二つの不細工カボチャの体を張ったベロベロバァーにより

トウカは喜の感情を初めて表した


「オタマ頼む」


アキヨリは赤ん坊達をオタマに預け

一心不乱に何か書き始めた


「リッカ笑ったぞ!トウカが笑ったぞ!

うわああああああああ!」


「あははあははあはは!

若様が狂われた!

いつもの若様だ

俺達のいつもの若様だ!」


バシッ!


そう笑うダンザの額に

(アンドウ ダンザ)

と書かれた半紙が貼り付けられた


「見えるかリッカ!

俺の友 アンドウ ダンザだ!」


ダンザが額に貼られた半紙を剥がすと辺りに無数の半紙が舞っていた

その半紙一枚一枚に一言ずつ


きゃた

きゃた

きゃた

きゃた

きゃた

きゃた

きゃた

きゃた


と書かれいた


「リッカ見えるか?!

リッカ聞こえるか?!

笑ったんだぞ

俺達のトウカが笑ったんだぞ!」


踏み潰された様にグチャグチャになった不細工カボチャに見つめられてトウカの炎は更に燃え上がった


「きゃたきゃたきゃたきゃたきゃたきゃた!」




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