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六角の花   作者: フミ
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再会はゲンコツ

「迂闊!」


体当たりを喰らい体のありようを思うがままにならなくなり

一瞬のされるがままの最中アキヨリは後悔していた

警戒を怠っていた

体当たりではなく刃物、飛び道具の類であれば命が無かった


しかし聞き覚えのある声で名を呼ばれ

逆手に持った脇差しから手を離した


そして馬乗りにされ逆光の中で見るその顔に

こいつに不意撃ちを喰らったのならあながち油断をしていた訳では無いと安堵した


「生きていてくれたのかダンザ!」


そのアキヨリの言葉にギンザブロウは懐の中で握ったノミから手を離した


「生きていたとはこっちの台詞だ!

どこで何をしてたんだ!」


「ホウライ山で焼き物を焼いていた」


「ふざけんなあぁぁぁ!!」


ゴギャ!


アキヨリの頬骨から鼓膜に衝撃が音として伝わった


「おい!ヤッコさん

人ん家の前で何してやがる」


袖をまくるギンザブロウにアキヨリの掌が差し出された


「すまない!捨て置かれよギンザブロウ殿!」


「スカしてんじゃねえ!

イスパニアとの戦で俺はアキマサ様に

アキヨリは必ず生きてる

力になってやってくれって言われて逃がされたんだ!

敵を目の前にして逃げるなんてみっともなくて耐えらんなかったよ!

だけどあんたを守る為なら我慢出来たんだ!

それなのに焼き物を焼いてただと!」


ゴギャ!ゴギャ!ゴギャ!ゴギャ!


「俺はあんたを捜して捜して捜して捜して

路銀も使い果たして死ぬ程腹が減って百姓の家に盗みに入った

籾殻の付いたまんまの米を見付けたよ

そしたらその家の爺さんが帰って来た

俺は情けねえことに焦って鉄砲を爺さんに突き付けた

爺さんは鉄砲を握って自分の額に押っ付けて言った


「それは来年の種籾だ

持って行かれたらこの家のもんは皆飢えて死ぬ

どうせ死ぬなら今ここで殺せ

百姓がいつまでも侍の言いなりになると思ったら大間違いだ

その目に死に様焼き付けてやる」


俺の鉄砲はそんなもんの為にあるんじゃねえ!」


「すまないダンザ」


「謝るな!

戦の準備をしてたって言ってくれ

シジマ家を再興する為に力を蓄えてたって言ってくれ

俺達生き残った者を思いやるなら

戦を避けて身を隠すんじゃなく

俺の為に死ねって言ってくれ

もうどこにも行かないでくれぇ!

ああっおおおおおおおおっ!」


「約束する

もうどこにも行かん」


アキヨリはアンドウ ダンザの拳を強く握り締め

それが誓いの証だとばかりに力を籠めた

ダンザは自分の拳をアキヨリに感情をぶつける以外の事に使いたくなっていたが

まだ手を握っていて欲しくて

拳を持っていきたいところを逆に拳に近づけ猫のように背中を丸めた


「だがダンザよ!

俺をこれだけぶん殴っておいてただで済むと思うなよ!」


ダンザはハッとなって身を翻し距離を取ろうとしたが遅かった


ゴギャ!


ダンザの目には見たくも無い

彼の後方にある

ニザエモンの屋敷の塀から顔を出す芭蕉の葉が映った


「来い!ダンザ!」


「おう!」


その声にダンザは本当に見たいもの

腕を振り回すシジマ アキヨリを視界の中心に捉え

シジマ家一の狙撃手の魂を鉛玉ではなく握り拳に籠め

的の中心を百発億中の通り名に恥じぬ腕前で撃ち抜き


ゴギャ!ゴギャ!ゴギャ!ゴギャ!


同じ数だけ東国の赤鬼の金棒のような拳を喰らい

晴天に飛び交う流星を見て


「うわははははははははははははははははははは!!」


約一年半ぶりに腹の底から笑った




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