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六角の花   作者: フミ
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暗殺者

「アキヨリさまー

リンタロウで御座いますー

お迎えにあがりましたー」


「あーご苦労

すまないがもう少し待ってくれないか」


家族の顔を一人一人じっくり見

さらに鏡に身だしなみを整えた自分の顔を映し

最後にトウカを頭頂部から爪先まで念入りに眺め尽すという

アキヨリの朝の日課の真っ最中であった


「リッカ…」


目を固く閉じ輪郭のぼやけた視界を元に戻し

昨日の晩から皆の住居となった土蔵の出入り口に弾け飛んで行くアキヨリの背中を皆の笑顔が見送った


「姉様は終ぞ目覚めなかったな

道中本当に世話になった

慣れない船旅とてもお疲れだろう

昼には戻れるだろうか

リッカに姉様の顔を見せてやるのはその時かな」


走って来た勢いそのままに重い観音開きの扉とは別に設えられた引き戸を開けると

そこには目を開けるだけ開けたリンタロウがいた


「すまない待たせた!」


「いいえ…少しも待ってなど…

しかしお似合いで御座います」


「そうか?

直垂など暫くぶりだからな

着慣れていない感じがするのではないかと心配していたのだ

おだてられて気に入ってしまった

貰ってもいいだろうかこの直垂」


「もちろんで御座います

大旦那様はもうすぐアキヨリ様が来ると言って

それはもうご機嫌でお着物やら身の廻りの物をあれこれ用意していたので御座いますよ」


「言葉が無い!

さっ

立ち話などしていたら遅れてしまう案内を頼む」


「はい

しかしそのご様子では嫌でも目立ってしまいます

いかがいたしたものか」


「こんな立派ななりで裏通りを行ったら還って目立つ

この先も身を隠しながら日々を送るのは窮屈でたまらん

堂々と大通りを行こう」


「そうで御座いますね

ここから大旦那様のお屋敷まですぐで御座いますし

ここいら一帯は大旦那様の持ち物で御座います

まだ朝も早よう御座いますから

誰かと出会しても身内で御座いましょう」


「あそこに見える立派な瓦屋根がそうか?」


「はいあそこが…

ああ!アキヨリ様!お待ち下さいませ!」


リンタロウの返事も待たずアキヨリは駆け出していた


誰にも出会さない筈だった

実際とも会わなかった

だがアキヨリの姿を見つめる二つの目があった


その二つの目の持ち主はアキヨリに強い意を向けていた

それは殺気にも似たものだがアキヨリは気付いてはいない


浮かれている訳では無い

悪戯な態度はとっているが

いつもに増して神経を研ぎ澄ましていた

にも関わらず気付いてはいない


それはなぜか

自分を視界の中心に置く者がいればどんなに隠れようが察知するアキヨリの感覚を逃れる者

それは熟練の武芸者や悟りを開いた僧侶ではない

己の意を全て弾丸に籠める事の出来る狙撃手という類の暗殺者である



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