見取り図
「ジョスイ殿どうかご無事で!」
「おー!」
ヘイクロウに応えたジョスイの声は
「おー」一言だけだったが音量はすぐに小さくなり
彼の走る速度を感じさせた
「んっ!」
アキヨリは小さく咳払いした
声をかける機を逃したのだろう
「アキヨリ殿申し訳御座らん!」
「え?!なんで?」
バツの悪いところに前触れもなく大喝する男の豆鉄砲を喰らい
アキヨリは素っ頓狂な声で間抜けな返事をしてしまった
「拙者達はアキヨリ殿達の護衛をジョスイ殿より仰せつかった
必要ならばそなたの命を狙うナリカワ ヒデサト ヒデカツを亡き者としても構わぬとまで命じられて御座った
その敵であるヒデカツを拙者達は救おうとしたのだ!」
「気にするな
成り行きを聞いただろう
礼を言うべきだ
ありがとうヘイクロウ
そなたのような男に巡り会えて俺は幸運だ」
「ううう!」
ヘイクロウは牛のように唸り
顔を怪我をしていない右手で覆った
するとそこに当て木や包帯でガチカチに固められた左手も添えられた
「治療は終わったぞ
多少動かしても痛くはあるまい
今日はここで休ませてもらえ
ズキズキ痛んて眠れぬようなら
この痛み止めを飲め
儂はもう寝るぞ
また明日来るのだぞ
それではニザエモン殿 若大将殿
失礼しますぞ」
「飛び出して行った拙者を追って下さったばかりか
ここまで手厚い手当てを頂き
がだじげのう御座る!」
「先生の医師としての心意気
このアキヨリ感じ入りました
お疲れ様でございます
拙者の馬でお送りさせて頂きたく存じますが」
「それには及ばん!
ニザエモン殿が何かそなたにまだ用があるという顔をなさっておる
しかし今夜は良いものを見せてもらった!」
シュウテツ医師は気忙しく別れの挨拶をしながら医療用具をまとめ
飛び蹴りをするように躙り口を出た
「先生改めてお礼に伺います
お疲れ様でございました
リンタロウ送って差し上げなさい」
「はい!かしこまりました」
去って行くシュウテツ医師に暫く深々と頭を下げたニザエモンは
頭を上げるなりジョスイの残した見取り図をアキヨリに突き付けた
「形に出来ますかな?!」
見取り図というよりは図面だった
それにはナントカ号の大砲の搭載する位置
取り付け方法 新たな武装などが事細かに記してあった
それを受け取って
食い入るように眼より脳に叩き込みながらアキヨリは答えた
「朝飯前!
拙者にも二、三案が御座る
ん?!」
最後の一枚にアキヨリの脳内は疑問符だらけになった
「これは貯水池の見取り図で御座るな
長期に籠城するにあたり海から近いこの町に貯水池を増設するのは頷けるが
これでは造船所と海の間では御座らんか
ジョスイは折角武装した船をどうやって海まで運ぶつもりなのか」
「如何いたす?アキヨリ殿」
「このまま進めたい!」
満面の笑みでニザエモンが頷いたころ
ジョスイの髪は潮風になびいていた
「しかしボンボンもやるようになったぜ
少人数で城を乗っ取るやら
敵を手玉に取る手口は若大将さながらだぜ
早く会いてえ!」




