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六角の花   作者: フミ
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男 秀勝

「ジョスイ 俺はヒデカツに命を救われたのだ」


「はっ?

おめえ何言ってやがる…

いや、ちょっと黙ってろ

何があったか当てやる

俺は今最高に頭が冴えてんだ


まずはだな

ボンボンを仕留めるのに腰抜け兄貴は

不意討ちなり

待ち伏せなり

万全の備えをした筈だ

仕損じたらボンボンは家中で人気者だからな

後々めんどくせえ事山の如しってやつだ

だからヒデカツが自力で生き延びたのは不自然だ


あの時あの場所でボンボンを助けられる力を持ったヤツは

若大将 おめえだけだ

しかし意固地なおめえが家族を狙われてそんな事する筈ねえ

利用したんだ

それとも俺にしたように生きて償わせようとしたか


まあ何れにせよ おめえは最後にしくじった

そこをヒデカツに救われた

違うかよ」


「その通りだ

ヒデカツは命を賭して俺を救った

再び友と呼べぬかもしれんが

生きていて欲しい」


「でだ

そのヒデカツをまた救ったヤツがいる

二、三十人って言ったな

あいつに味方したナリカワ家臣がいたんだ

それは納得出来るあいつにはそういう力があるのは確かだ

大体その力を恐れての今回の騒動だ


だが納得行かねえのは何故城を奪った

とっとと逃げちまえばいいだろうに」


「ヒデカツを救った者の城に残された家族を逃がす為だ」


「だな

ひねくれ者の俺はそこに行き着かなかったぜ

当然裏切り者の家族は無事じゃいらんねえからな」


「拙者にはナリカワ ヒデカツは誠の武士

いや!

誠の男に見えて御座った!!」


ヘイクロウが不意に大喝した


「ヘイクロウ びっくりさせんじゃねえよ!」


「拙者の伝えるべき事を

このままでは お二方は全て見抜かれてしまわれる!

順を追って申し上げる

アキヨリ殿と別れた拙者達は

身を隠しながら下山する途中

旗指物でこさえた担架にて運ばれるヒデカツを発見いたした


口論して御座った!

このまま逃げると主張する者共と城に戻りその者共の家族を逃がすと主張するヒデカツとで御座る


最後は血に染まり虫の息とも思われたヒデカツの怒号により

皆涙を流し従って御座った!」


「おう!」


「それでどうしたよ!」


歯を食いしばるヘイクロウの背中をアキヨリとジョスイは声で押した


「拙者達が城まで跡をつけて行きましたなら

ヒデカツは兄ヒデサトに偽装した者共に襲われた

もうすぐやって来るから応戦しろと言い放ち入城いたした」


「ヘイクロウおめえどさくさに紛れて忍び込んだな」


「いかにも!

やがて城の兵と戻って来たヒデサト共とが撃ち合いになり申した

しかしそれも長くは続かず異変に気付いた双方はヒデカツを討ち取らんと探して御座ったが

担架からあれこれと指図していたヒデカツを拙者達も見失い申した


すると突如三の丸の櫓から砲撃があり

大挙して兵が押し寄せ申したがもぬけの殻

砲撃は次々にあちらこちらの櫓から放たれ

城内は大混乱となり申した

ヒデサトは恐れをなして一旦城外に撤退し二日の睨み合いとなったところで拙者はこの事お知らせいたす為

後ろ髪引かれる思いで城を抜け出し

石垣を滑り落ち腕を折り申した!」


「じゃあ残りのヤツらはまだ城の中か?!」


「左様

皆ヒデカツを助けると意気込んで御座った!」


「無茶しやがって!

ヘイクロウおめえの乗って来た船は足の速えヤツだな

今すぐ出せる状態か?!」


「ジョスイ殿!」


ニザエモンの声は畳を伝い茶室を出て行こうとするジョスイの足を掴んだ


「ジョスイ俺も行くぞ!」


「アキヨリ殿!!」


ニザエモンは躙り口の前に立ちはだかった

そして全身から陽炎を発し

その陽炎は通るなら俺を殺してからだと

ジョスイとアキヨリに老兵の腹にしまっていたギラギラした白刃を突き付けた


「通してくれ旦那

俺には出来る事がある

顔の効く国人衆にヤツらの逃亡を助け匿うよう話をつける

それだけだ」


「城を奪ったところで一月も維持出来ぬぞ」


「分かってるよ

俺もガキじゃねえ

そんな山っ気は起こさねえよ

だが若大将おめえには出来る事は無えし

還って話がややこしくなる

あの国じゃシジマの御曹司が来たって歓迎会なんざやっちゃくれねえぜ」


アキヨリはその場に静かに座り

まだ口をつけていない茶碗の酒を飲み干した


「物分りがいいじゃねえか

おめえはこの町にこそやる事がある

ナリカワに勝つ為のもの全部用意しろ

一日も無駄に出来ねえ明日からだ!」


「言われるまでもない

家に置き忘れた義父上の浴衣を取りに行こうと思っただけだ

それに俺はヒデカツの命を微塵も疑ってなどおらん!」


「ふっ

そういう事かい

命懸けで助けたおめえにウロチョロされたらボンボンも立場が無えからな

それじゃ俺は行くぜ」


「くれぐれも!」


「分かってるよ旦那」


ジョスイは茶室を去り

ニザエモンの手には数枚の見取り図が残された



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