それには及ばん
「こいつぁたまげたぜえ
生きてた上に城をぶん取るなんてなぁ」
「ヒデカツは無事なのか?!
詳しく聞きたい!
申し遅れたシジマ アキヨリと申す」
「存じ上げております
リンタロウと申します お見知り置き下さいませ」
「若大将、そいつは多分知らねえよ
ニザエモンの旦那の腰巾着だ
おい リンの字
実際見聞きしたヤツをさっさと呼んで来い
来られねえならどこにいるか教えろ」
「ジョスイ様と同行していた
ヘイクロウ様がお帰りになるなり私の所に血相を変えていらっしゃいまして
大旦那様はどこだ
ジョスイ様はお帰りかと
しかしヘイクロウ様の腕の骨が折れておりましたので
私も腰を抜かしまして
お医者様にお連れした次第でございます
ですからここにはお連れ出来ませんし
ヘイクロウ様の居場所は二の辻のシュウテツ先生の所でございます
お連れする道すがらお聞きした事ならお答え出来ますが」
「双方の兵力、形勢、武装
物音一つしねえ理由
ヒデミツの耳に入ってんのかいねえのか
援軍が来るにはまだ早えだろうが
来るのか来ねえのか
下手すりゃ今すぐにも あの城ぶん取れるかも知れねえんだ」
「ええと…
ヒデカツ様は二、三十人でお城を乗っ取った様子でございまして…」
「要領得ねえ!
ヘイクロウのヤツの容体も心配だ
おい、若大将!おめえの馬に乗せろ!」
「俺も行く!」
「あたりめえだ!」
「それには及ばん!!」
野太い声が響いたかと思うとリンタロウを押し分け
声同様野太い眉毛が二本躙り口から顔を出した
「ふぅー!ふぅー!
ニザエモン殿、この様な夜分に失礼仕る
ジョスイ殿、アキヨリ殿!
ご無事で何よりで御座る!」
「そなたはアクヤの馬具を用立ててくれた御仁!
なんと痛々しい!
とりあえずは横になられよ
ニザエモン殿 問題ござらんな」
「アキヨリ殿 かたじけない!」
アキヨリはヘイクロウの怪我に障らぬように
そっと それでも力強く茶室の畳に寝かせた
「もちろんかまわないよ
リンタロウお医者様を呼んで来なさい!」
「はい!今すぐ!」
「それには及ばん!」
甲高い声が響いたかと思うと
尖った鼻がリンタロウを押し分け茶室に押し入って来た
「ニザエモン殿 お侍方
ふぅー!ふぅー!
いちいち礼儀作法など構っておらんぞ!
この軽石頭!
治療はまだ終わっておらんと何度言ったら分かるのか!」
シュウテツ医師はヘイクロウを追って来たのだろう
息を弾ませ治療の続きを始めた
「おいヘイクロウ!
大丈夫か?無理するんじゃねえよ
先生 怪我の具合はどうなんでえ」
「知らん!
耳が聞こえん!
軽石頭の怪我など治療しておったら
耳が聞こえんようになった!」
「という訳だ
シュウテツ先生は信用出来る身内だ
ヘイクロウ君 詳しく聞かせてくれないかい」
「はっ!
では何から…
痛みで頭が回らん!
皆様方
聞きたい事柄から問い質して下され!」
「おう、おう、おう、可哀想によう
痛むかよヘイクロウ」
「とてつもなく痛くなどござらん!」
「怪我が痛むところ
心を鬼にして尋ねる
ナリカワ ヒデカツは今も存命か?」
「おい若大将!
さっきからあのボンボンに御執心じゃねえか!
あいつはおめえを裏切ったんだぜ
お人好しもいい加減にしろよ!」




