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六角の花   作者: フミ
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喧嘩だ喧嘩だ

四畳半という面積は三人の大男を収納するのには少々狭いようだ


アキヨリはジョスイとの距離が不愉快で

ジョスイはアキヨリとの距離が息苦しい


お互いに拳を握りしめて突き出せばお互いの顎なりみぞおちを打ち抜ける距離である


ニザエモンはそんな二人の黒ずんだ揮発性の分泌物を気にも止めず茶筅を回している


今頃は皆 用意された食事に舌鼓を打っているのか

風呂に入り旅の疲れを流しているだろうか

その四軒隣の蔵の内装は茶室に改装されていて

その茶室という檻に野獣を二頭捕らえたニザエモンは内心ご満悦である


「さ、お召し上がり下され」


ニザエモンが差し出した二つの茶碗の中の液体には

その味を連想させる それぞれの苦い顔が映っていた


「さて

お二人にはお二人にしか お頼み出来ない お願い事がありまして

長旅でお疲れのところ こうして御足労願ったのですが

よろしいですかな?」


「よろしかねえよ

さっきの話の続きがまだだ」


「他人の家庭の事情に関わる事ですから

あまり首を突っ込まない方がよろしいのでは?」


「よろしかねえよ

俺には目的が出来たんだ

こいつの家族を元通りの暮らしに戻してやるってなあ

こいつのカミさんが囚われたってんなら

それも連れ戻さなきゃ画竜点睛ってやつだ

教えてくれ!

なっ?いいだろ?若大将!」


「シラセ ソヤカという名は知っているか?」


「ああ?

そりゃおめえらシジマ家とシラセ家が戦った時 出てきやがった火の鳥を退治した守人じゃねえか」


「俺の義理の母だ」


「はあ?

何バカな事言ってやがんだ

一体いつの話だよ

今生きてりゃ八十過ぎのババアだろ

おめえのカミさん一体何歳だあぁ…って

そうか…

氷の眠りか

おめえの義理の父ゴクラクサイってのは

あのシラセ ナガヨリって事か」


「そこまで知っているとは

流石だな」


「大体の察しがついた

もうその事についちゃ聞かねえ

だがカミさんを取り返す算段はついてんのか?」


「朧げながらな

幼少の頃 義父上は俺にその手段を伝えてくれたようだ

その記憶は封印されていて時期戻るようだ

それさえあれば俺には必勝の策がある」


「ほほう、ナガヨリがそんな…」


「そうかい

なら そっちはおめえに任せるぜ


ぐびぐび


旦那!こりゃ酒じゃねえか!

まあいいや

飲みたかったとこだ


それより悪いが旦那の頼みってやつの前に俺の頼みを聞いてくれ

俺の手下共と鉄砲をありったけ貸してくれ

ナリカワのヤツからアキの国を取り戻すんだ

こいつらの家族があの山に帰るにはナリカワを追っ払う他はねえ!」


「鉄砲は売り物も含めて二千はありますが

私の私兵はかき集めて五百がやっと

それでナリカワ勢五万に打ち勝つと?」


「誰も勝とうなんて言ってねえよ

もうすぐナリカワは鎮西に兵を進めんだろう


あっちの大名にはもう手が回ってる

その行軍中のヤツらに局地戦を仕掛けて行軍を遅らせるんだ


途中通る国には完全に俺に地の利がある

一年いや二年は行軍を遅らせる自信がある


そうすりゃまだナリカワが完全に掌握してねえ諸大名に

てめえの威信を見せ付けようと見切り発車したこの鎮西攻めは必ず破綻する

治めて間も無いアキの国は自ずと手放す事なるだろうぜ

こいつの家族が元の暮らしを取り戻すのに

あの国を治めるのがナリカワじゃなきゃいいのさ」


「ジョスイ殿」


「なんだよ」


「死にますよ」


「本望だぜ

俺は本当に大事なものってのは何かこいつの家族に教えてもらったんだ

なあ!若大将!おめえもこの話乗っただろう!」


「反対だ」


「なんだとこのやろう!!」


ジョスイは立ち上がりアキヨリの胸ぐらを掴み力の限り突き上げた


「てめえにはカミさんを取り戻す仕事があるよ

だがな!

そんなに命が惜しいかよ!

てめえの口からそんな言葉聞きたく無かったぜ!!」


「それは俺の台詞だ!!」


アキヨリも立ち上がりジョスイの胸ぐらを掴み捻じり上げた


ブチブチブチィィ!


ジョスイの華美な洋装がボロボロになっていく


「ジョスイ!

なぜ貴様程の男が勝利を一言も口にしない!

俺がナリカワと戦うなら!

向う三十年!

いや、子々孫々に至るまで!

このシジマ アキヨリの名を聞いただけで!

臓腑を吐き出し!

糞小便を垂れ流して!

一族郎党狂い死ぬ程!

完膚無きまで叩き潰す!!」


アキヨリの胸ぐらを掴んでいたジョスイの手は

アキヨリの手を軋む音が出る程強く握り締めた


「勝つ手があるんだな!

若大将!!」


「ある!!」




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