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六角の花   作者: フミ
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城塞都市

ジョスイが舳先に立ちカンテラをかざす

彼の目には幾つもの街灯りが映っていたが

やがてそれはただ一つとなった


街灯りが消えいって一つとなった訳ではない

ジョスイの視線が移されたのだ

桟橋でかざされる一つのカンテラに


「おう、気付いてくれたみてえだな

こんな夜中にご苦労なこった

後は座礁しねえように…」


ズウウゥゥン…


「やっちまったか?!

いや、船は進んでんな

ちくしょう またあの糞ガキが糞馬と相撲を取ってやがんな

もうすぐ入港だってんのに船底に穴が空いちまう

おい!キリュウ行ってやめさせろ!」


「へい、只今!」


キリュウの姿は甲板からスッと消えた

消えた地点には船底に続く階段があり

その階段には途中で立ち止まるキリュウの姿があった


「シジマ殿?」


そして恐る恐る暗闇に向かって声をかけた


ズウウゥゥン!


「なんだろうか?」


「あわわ!揺れる!

もうすぐ着きますぜ シジマ殿もこっちに来たらいかがで?

街灯りが綺麗ですぜ

皆さん方もいやすし」


「落ち着かんのだ」


「あれ、もしかしてシジマ殿はサカイは初めてで?」


「ああ一度も無い

兄上や御館様に誘われたが断った

賑やかなところは野山で育ったから苦手なのだ」


「そりゃ意外で

戦場じゃ目が痛くなるくらい派手なお方が」


「目が痛くなるか…

甲冑や陣羽織は派手好みではあるが」


「いやいや、いきなり笛吹いたり踊り出したりで

俺等ぁ度肝抜かれやしたよ」


「ううむ…

ジョスイがやめろと言っているのだろう?」


「察しの良いこって助かりやす」


やがてアキヨリとキリュウが甲板に筍のように生えて来た


「おう!田舎もん 気持ちは分かるが

ドッタンバッタンやられたら俺の船がぶっ壊れちまう

それに誰が見てるかも分からねえんだ暫く大人しくしてな」


「ううむ…返す言葉がない」


「あはは、アギ、街灯り見ろ」


「ああ、そうするよ

姉様とオタマは子供達のところか

世話になりっぱなしだったな

おお!昼間のようだ 街の人々は一体いつ眠っているのだ」


「へっ!田舎もん丸出しじゃねえか

まあな おめえが驚く所はそこじゃねえんだ

暗ぇから良く見えねえか?」


「俺が驚く?

人や物が溢れているだけではないか

な、なんと!!」


「はっはっは!流石だな早速気が付いたか

しかし翻弄されてるおめえは 本当に面白えな

なあみんな?!」


アキヨリの翻弄されぶりに甲板に集まった船員は頬を緩め

シラセ家一同は手を叩いたりマイなどはケラケラ声を上げ笑った


ただ一人ジョスイが皆を囃し立てた理由を知るキリュウは感心した表情でアキヨリの横顔を見ていた


アキヨリが驚きの原因に釘付けになっている間

セント、シメオン、ジョスイ号は桟橋に横付けし

繋留され錨を下ろしたが彼は左右に揺れながら視線を奪われ続けた


そんな自分の周りが疎かになるアキヨリは背中をグイグイ押され

相手が誰か分からぬまま生返事をした


「分かったよ船を下りればいいんだろ?」


導かれるまま歩を進め気が付くと

まだ船の上である


「あれ?俺は船を下りたんじゃ?」


「へっ、ぽやっとしやがって

足場板から落ちりゃ面白かったのによ」


「足場板?

ああ、そういうことか…」


見上げると二本の帆柱と手を振る船員達に見下ろされた

シラセ家一行は桟橋ではなく

セントなんとか号に横付けされた小型の商船に乗り移されていた


「ありがとう!

本当に世話になった

後ほど改めて礼を言わせてくれ」


なんとか号の船員に手を振り返し

アキヨリは同じ船に乗る一人一人に目を配った


「みんな いるか?

姉様、オタマ、アクヤ、いるな

リヨウ!リヨウはどこだ?!」


「おめえの頭の上だよ

そんじゃ行くぜ!」


アキヨリ達を乗せた船は真っ直ぐ街灯りに向かって行く

水路である

幅十六間はある水路がサカイの町をぐるっと一周して

さらに十字に町を四つに区切っている

それは なんとか号の船上からアキヨリを釘付けにしたものの一つである


「ジョスイこのまま町の中心まで行くのか?」


「馬も鷹もいるんだ

誰が見たっておめえが来たって分かっちまうだろ

いろんなヤツがこの町にはいるんだ

ちっとはお尋ね者らしくしろってんだ」


船は左に直角に進路を変えて町を囲む水路に入って行った

水路の両脇にはびっしり隙間なく蔵が建ち並んでいる


「この水路は堀

この建ち並ぶ蔵は城壁

そしてこの町は城だ」


アキヨリの呟きを遮るように鎖で吊るされた橋がゆっくり下りて来た


良く手入れされ油を差された歯車と鎖が奏でる軽やかな旋律は

アキヨリの心の中の何かと同調し

同じく同調するリッカの軽やかな笑い声を

この過酷な旅の最後に思い出させた



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