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六角の花   作者: フミ
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手探りながら

アキヨリが船に拾われてから三日が経過していた

西陽の射す船室でアキヨリはリヨウと肩を並べ

一枚の図に向って筆を走らせていた

だが今は止まっている

図は海図ではなく地図のようだ

筆が止まっているのは地図とは別の事柄に囚われているからのようだ


「しかし俺も情に流され易過ぎる

キリュウとて善意で言ったことではないか

それにジョスイにとっての理想の国の在り方とて分からず終いだ

兄上を引き合いに出されて雰囲気だけで分かった気になってしまった

あれ以来気まずくてジョスイとは口もきけんしなあ


大体コウズケの治政は兄上あってのものだ

他の者にもは真似出来るものでは無い

民を慈しむ心然り

難しい裁きにあっても兄上の絶妙なさじ加減で円満に収めていたではないか

兄上も人間だ時には判断を誤る事も無くは無かったが

よほどの事でなければアキマサ様の裁きならば仕方ないと皆納得したものだ

人の営みにはいざこざが付き物だ

コウズケ一国ならまだしも

もし兄上のような人格者が仮にいたとしても

日の本中に数限りなくある争い事に関わる事など出来はしまい

だから過去の失敗から学んだ

練り込まれた法が必要なのだ


歴史を振り返っても同じ血筋に傑物が続くことなど稀だ

一個人の力に頼る政治ほど危ういものは無い

そして一個人の力で治められるのは

お国言葉が同じ一国が限度なのではないか…


痛え!

分かった!リヨウ!

地図に集中するからもう突つくな!」


コッ、コッ、コッ


リヨウのくちばしが地図の上に点を置いて行く

それをアキヨリの筆が線に仕上げて行った


「うん、やはり俺の予想通りだ

リヨウご苦労だった


皆遅いな

夕刻には集まるよう言っておいたのだが…


ああ、来た来た」


アキヨリの待つ船室に船員の仕事を手伝っていた

今は積荷のミカンに身をやつす

シラセ工房の五人がやって来た


「アギ、は、話って何だ?」


「皆お疲れ様

この地図を見てくれ

ああ、それより先ず座ってくれ」


「そ、その地図!ホ、ホウライ山!」


「そう、流石ゲンは察しがいい

話というのは他でも無い

リッカを助け出す算段を皆に聞いて貰いたい」


「ほ、本当か?!

そ、そんな事が、が

で、出来るのか!」


皆表情を明るくし顔を見合わせた


「ああ、まだ分からない事があるが

おおよその算段はついた


先ずホウライ山に入るには

険しい北からの山道

そして西の沢、南の沢沿いの道の

三つの道がある


で、俺は考えた

東からはどうなのだと

そこでリヨウとホウライ山の地図を作ってみた」


地図の上に五人の頭がぎゅうぎゅう詰めになる


「そ、そういえば東には

な、何があるかと聞かれたら

こ、答えられない」


「そう

だから上から見たリヨウと俺の見たものを総合して書いたのがこの地図だ

良く見てくれ

東側のここだ

全く同じ地形が二つ並んでいる

ここにリッカがいると俺は思っている

いや間違い無くいる!」


「おお!」


「ああ!」


「うう!」


普段殆ど声も出さない五人が感嘆を表した


「義母上とリッカはホウライ山を離れられない

リッカが囚われていると思われる火の神を封じ込める壇はホウライ山中になければならない

リッカの話では外からは見えない仕掛けがされているらしい

そして巨大なものでもあるらしいから

正確な地図を書けば必ず矛盾が現れる

その矛盾がこの二つ並んだ同じ地形だ


かなりの広さがあるがこの一帯を鉄の溶ける熱さまでの熱で覆う術が俺にはある

完成させるまでに多くの巻物を作らなければならない

数年かかるがそれさえあれば義母上には絶対に負けん

見えない仕掛けなどはドーマンの術という術で簡単に打ち破る事が出来る

まあまだその術の真髄を極めてはいないのだが


後は火の神をどう処するかだが

ゲンの手紙にもあった義父上の遺してくれた何かが何らかの力を発揮して解決してくれるのだと思う

それには数十年かかるらしいが

多々良の守人の力を使った仕掛けだと推測できる

それなら俺の力を足して行けば大幅に時間は短縮できる


複数人の多々良の守人はお互いの力を足掛かりにして数倍にも力を増幅できるらしい

義父上の遺した何らかの力を俺の力で増幅すればそれも数年に短縮できる

それを探し出す時間も含め十年あれば充分可能だと俺は思っている

いや十年もかけはしない

永い年月待たせてしまうが

また皆でホウライ山で暮そう

リッカと義母上は俺の命を懸けて救い出す

だからまた皆でホウライ山で暮そう!

うわああ!」


口では返事をしない五人の返事は体当たりだった


「シジマ殿!ホウライ山が見えてきやしたぜ!」


ホウライ山を見上げる皆の目は希望に満ちたものであるだろう



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