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六角の花   作者: フミ
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臆病者の宴

ジョスイの呟きは本人が思ったよりはっきりと声になってしまっていた

当然アキヨリの耳にも聞こえ

「親父」という言葉はアキヨリの精神の中核を二度三度つついてきた


「無理に話せとは言わん

ただ一つだけどうしても気になる事がある

なぜ公家達があの恐ろしい御館様を討つまでに至ったのだ

彼等を追い詰めたのは何だ」


ジョスイは遠くに向けた視線を舳先の白波に戻した


「それは御館様の要求が原因だ

御館様は古代中華のように

楚だ魏だ晋だと

この日の本の中にもう一つ国を作って

そこの王にしろと朝廷に要求したそうだ」


「初耳だ!

しかしそれはどういった意味を持つ?

朝廷とは完全に分離した政権を手に入るという事か?

しかしそれはある程度なら幕府でも実現出来よう」


「そうだよ、今のお前だよ

朝廷の連中は訳が分かんなくなっちまったのさ

人間が一番怖がるもんて何だと思う?

訳が分かんねえもん

得体の知れねえもん

理解できねえもんだ

そんでもって一番恐ろしい人間ってどんな人間だと思う?

それは臆病者だ

自分の不安を解消する為なら何でもやっちまう

おめえがいくら何をして来るか分かんねえ奴だとしても

たかが知れてる

やっちゃいけねえ事だと一度腹に決めたら絶対にしねえだろ?

何を考えているか分かんねえ御館様と

臆病者の公家達って二つの条件が重なったって事さ」


「知れば知るほど分からん

国を二つに分けるなどと

日の本を一つとし

揺るぎ無い平和をもたらすのが御館様が我等に与えて下さった夢ではなかったのか!」


「おめえ達の住んでた

アキの国ホウライ山には火の神が封じ込められているらしいな」


「何を急に!」


「俺の動機ってやつを教えてやろうって言ってんだ

黙って聞いてりゃ御館様のやろうとした事もなんとなくだが分かるさ」


アキヨリは無言でジョスイに向き直り背筋を伸ばした


「四百年前ホウライ山に火の神が封じ込められてから

アキの国には変な病が流行り出したらしいぜ

喉やら胸やら異常に腫れ上がって苦しみぬいて死ぬ者やら

昨日まで元気だったのに突然ぱったり逝っちまう者やら

はたまた異様な体つきの赤ん坊が生まれるやら

火の神の祟りだってんで皆アキの国を離れようとした

だがそれは許されなかった

アキの国は封鎖されたんだ

祟りが国中に広がるのを恐れた幕府と朝廷によって

街道はもちろん山道やおよそ人が通るであろう道に関所が設けられ

通り抜けようって奴は問答無用に殺されたんだってよ

だが中には通り抜けた奴もいたのさ

金持ちやら権力者だ

だがな残った豪族もいたのさ

当時アキの国を治めてた

サナガ氏さ」




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