唐突な問い
順風満帆という言葉がある
文字通り船は帆に受けられるだけの風を受け航海は順調であった
順調な航海とは裏腹に反り返った二枚の帆を見上げるジョスイの胸の内は暗澹としていた
「どうしたもんだろうね」
「ジョスイ何を思案している」
「おう若大将、もう目が覚めたかよ
出来れば船室で大人しくしてて欲しいんだがな
何しろおめえはお尋ね者中のお尋ね者だからな」
「それはお前も同じだろう」
「俺はいいんだよ何しろ船長だからな」
「お前が?!この船はニザエモン殿の船ではないのか?」
「ああそうさ
だが船長は俺だ、このセント シメオン ジョスイ号のな」
「ぷっ!」
「ああ!てめえ笑いやがったな!」
「南蛮船ならともかく弁才船にセント何がしとは笑うなという方がおかしい
いや、これは弁才船か?」
「おお?おめえ分かるのかよ」
「昨夜は暗くてよく分からなかったが
まず巨大過ぎる そして甲板がしっかりし過ぎている
外見は商船の体を成しているがこれは軍船である安宅船といってもおかしくない」
「へえ、坂東武者は船には疎いと思ってたがな
だかおめえにも分かっちまう位なら
ちょっとやり過ぎたか」
「何を企むジョスイ!」
「俺じゃねえよ企んでるのはよ」
「ニザエモン殿か?」
「さあな、この調子なら七日もすりゃサカイ着くさ
本人に聞けよ
本当は俺もよく知らねえんだ」
「本当だな」
「いちいち疑うなよ
俺は大砲が積めるよう創り変えろって言われただけだ
なんでだって聞きたかったが
ニャっと笑った顔が聞くんじゃねえと言ってたから恐ろしくて聞けなかったよ」
「ひとまず信じる
しかしニザエモン殿は俺やお前を手元に置いてどうしようと言うのだ
ナリカワを敵に回すようなものだ
何も得はあるまい」
「おめえだったらどうするよ」
「何がだ?」
「だから、唸るように金があって
俺とおめえを手元に置いて何をするよ」
「………」
「まあいいさ、今度は俺も聞いてみるさ
おめえと一緒に行けば大概の事は怖くねえ
ところでよホウライ山でおめえと別れた後
俺がどうしてたか聞きたくはねえかよ
聞きてえだろ?な?な?」
「ふん!ああ、聞いておく
お前が突然現れてからずっと疑問だった」
「珍しく素直だな
俺はおめえに言われた通り鎮西に向ったぜ
オオトモのヤツとは同じ神を信じる大名同士見知った仲だったからな
ところがあの野郎ナリカワとくっついてやがった
手下になって御家安泰ってとこだろうよ
命からがら船かっぱらって逃げたら大嵐でよ
舵は効かねえは帆柱折れるはで岩にぶつかって木っ端微塵よ
そんで気が付いたらおめえの馬みてえに鉤爪にぶら下がってたよ」
「あはははは!お前も積荷のミカンだったのではないか」
「へっ!違えねぇ……」
「どうした?
そういえば何か考え込んでいたな」
「ああ、このまま行きゃあよ
三日もすりゃホウライ山が見えるだろうよ
あいつらに見せてやった方がいいのか悪りいのか
燃えちまった屋敷を思い出させるのも酷だしなぁ」
「なんだと!ナリカワの仕業か?!
あの屋敷を燃やして何の得がある!」
「おめえ知らなかったのか……
こりゃ俺としたことが下手うったぜ…」
ドカッ
アキヨリは座り込み黒い何かを全身から発し始めた
その場を去たかったジョスイだがそれも気まず過ぎた
「気まじぃなあ、なんか言えよこの野郎
俺に気を使って
気にするなとか
いずれ分かった事だとか言えねえのかよ」
ジョスイがヘソの少し上あたりでそう言うとすぐ望みは叶った
「ジョスイ、見てもらう事にする
皆と一緒にもう一度この目に焼き付けたい」
「そうかい、おめえがそうしてえなら皆嫌とは言わねえだろうさ」
「礼を言う、お前がどれだけ俺の家族を思いやってくれているか心に染みた
ところでジョスイ」
「なんだよ」
「なぜ謀叛など起こした」
「はあ?普通今ここで聞くか?!」




