胴上げ?
「おう!若大将生きてやがったな!
安心しなみんな無事だぜ
感謝しろよこのジョスイ様によう」
「ああ!感謝するよ
ジョスイお前も無事だったようだなぁ?!」
我が目を疑いリヨウを抱えたまま二艘の小船にアキヨリは駆け寄った
船の間の空間にジョスイと思われる人影が立っている
つまり宙に浮いているのだ
「ジョスイそれはどんな仕掛けだ?
それとも何かの術か?!」
バチャバチャ
足元を波が濡らす程近づくと手品のタネは明らかになった
「ふん、」
「ふん、ってなんだよ!
さしずめ俺が宙に浮いてるとでも思ったんだろよ
こうやって二艘を板っきれで繋がねえとおめえの馬は乗っかんねえだろうが
お手間をかけましたとか言えねえのかよ」
「かたじけない、手間をかけた」
「あ、ああ、それでいいんだよ…」
「はははっお二人共なんだかんだで仲がよろしいようで」
櫂を漕いでいたキリュウが割って入った
アキヨリに疑心を抱かせぬよう顔見知りの二人が迎えに来たようだ
「誰がだよ!」
「誰がだ!」
バシャバシャバシャバシャ
ドスン!ドスン!
アキヨリとジョスイに睨み付けられたキリュウを庇うように
リヨウが前足と後ろ足を一艘ずつ二本ずつ海水の滴りと供に乗せた
「おい、馬!
あんまりがしょきに乗せんじゃねえよ!
船がひっくり返っちまうだろが」
「がしょき?うわっ!」
ドスン!
跳躍して船に飛び乗ったアキヨリは空中でジョスイの言葉に違和感を感じ捕らわれ体勢を崩し船上に尻もちをついた
「おい、若大将足元ふらついてんぞ
酔っ払ってんのか?」
「こんな時に酒など飲むものか!
いで!痛て!」
リヨウがアキヨリの頭を鷲掴みにして翼をたたんだ
「はっ!無様なのはご主人だけってか
そんじゃ行くぜ」
アキヨリを待つ船は思いの外大きく近付くにつれ その有り様が目に飛び込んできた
船体から長く何かが真横に張り出していた
「帆柱が折れているのか?!
ジョスイ、ここに辿り着くまでに何者かと戦闘になったのではあるまいな!」
「ああ?
あれは積荷の積み下ろしの滑車がついた腕だ
おめえ達はたった今から積荷のミカンだ
いいなミカンだぞ!」
小船が貨物船に横付けすると人の頭程ある鉤爪に幅広い皮製の帯が下げられ下りてきた
まず巨大な黒いミカンが引き上げられて行った
アキヨリが甲板を見上げると黒いミカンを待ち構える五人の人影が見えた
「ああ、早く、早くみんなの顔が見たい
リッカに一人一人じっくり見せてやりたい」
じれったいが四間もありそうな甲板までの距離を飛び越える事など出来はしない
アキヨリは甲板に向かって声をかけた
「厄介になる身分であるが頼まれてはくれないか?
すまんが綱を下ろしてくれ
待ちきれんのだ!」
「だとよ、手が空いてねえなら開けてやって綱を一本よこしてやってくれ」
すると人影が一つ増え応えた
「行きますぜ、暗くてよく見えねえんでそっちで避けてくださいよ」
「すまない ありがとう」
「一二の三で行きますぜ
一二の三!」
「おい!若大将!」
バチィン
アキヨリは真っ正面から綱を受け捕まえると気持ち悪いくらいの速さで登り始めた
「ゲン!タノスケ!はあっはぁ!
チョウキチ!はぁ!
マイ!オタマ!」
息を切らせ五人の顔が表情がうっすら見てとれたと思ったその時アキヨリの体は垂直に飛び上がった
綱を甲板から彼を待ち受ける五人と数人の水夫達に力任せに綱を引き上げられたのだ
「うああ!無茶をする!」
ろくに灯りの無い所で宙を舞ったアキヨリは自分がどこに位置するのか全く分からなくなった
だが間も無く上昇する力と重量が均衡し
空中に静止する一瞬が訪れどれだけ飛び上がったのかを了解した
なんと甲板から人の背丈の倍程の高さだった
上を見上げる顔達にアキヨリは叫ぶ
「みんな!顔を顔をよく見せてくれ!」
アキヨリの願いは叶わなかった
綱から手を離した五人に抱きとめられ揉みくちゃにされ
どっちが上でどっちが下なのかもしばらくは分からなかった




