六角の花
青い睡魔がゆっくりとアキヨリに降りてきた
「ドーマン…」
アキヨリがそう唱えると閉じた瞼の裏には青い揺らめきが映し出された
その揺らめきを小さな幾つもの光が行き交い輪郭を際立たせていた
アキヨリはどこに術の印をつけたのだろうか
「水面?星?リッカ君は…」
リッカとの確かな繋がりを感じながらアキヨリは深い眠りに落ちて行った
だがしばらく経つとむくりと起き上がり
身を横たえ熟睡するアクヤの内臓に負担がかからないように
その巨大な体をひっくり返し寝返りをうたせた
そしてそのままアクヤにのしかかり眠った
太陽は天高く昇り初夏の真昼の日差しが具足の鉄板を熱く熱していた
にも関わらずアキヨリはまだ眠り続けていた
「熱っ!」
寝返りをうったアキヨリの脇腹に作務衣の隙間から具足の熱せられた鉄板が押し付けられた
飛び起きたアキヨリが目にしたのは楽しそうに野生の馬達と走り回るアクヤの姿だった
「術のせいで朝日の光を感じなかったようだ
いかんな、だが出立は暗くなってからだ」
アキヨリは立ち上がった
ただ立ち上がったのではない
もう二度と地に伏せる事など無い
もう二度と絶望し己の無理を嘆く事など無い
咲いているのだ
アキヨリの心には咲いているのだ
隙間無く咲いているのだ
リッカという六角形の花が隙間無く絶望や虚無の類が入り込む隙間が無い程咲いているのだ
アキヨリは立ち上がった




