刹那
「がああぁぁ!!なにをするくぁ!!」
銃声の直後叫び声が上がった
アキヨリが暴発させた鉄砲はまだ構えられておらず
発射された弾丸はたまたま隣にいた兵の足を貫いた
もし発砲音だけが鳴り響いたなら狙撃を準備していた他の者も立て続けに発砲していただろう
しかしアキヨリでなく兵が撃たれた
それはナリカワに敵対しアキヨリに見方する何者かを連想させ狙撃手達は銃声に注意を向けざるを得なかった
この場にいる者全員の視線がアキヨリから外された
鎖のような視線の戒めを外されたアキヨリとヒデカツは反発するバネの如く予定した行動を開始した
まずはアキヨリ
己の槍を空中に放る
突き付けられた二本の槍を各々左右の手で掴み引く
銃声に気を取られていた二名は簡単に槍を奪われる
その槍を回転させ前方に力任せに投げる
右
左
道を遮る十数名、槍の回転を受けそれに習い回転し倒れる
アクヤの腹を蹴る
アクヤは腹を蹴られる前に飛び出す
槍を突き付けていた二名を駆け抜け様に両足で顔を蹴り上げる
両名白目を向き倒れる
落ちて来た己の槍を掴み前傾姿勢をとる
アクヤは全速力の域に達する
続いてヒデカツ
脇差しで己の前に乗る喉笛をかき切る
馬より引き摺り下ろす
の筈だった
だがヒデカツが銃声と同時に脇差しを抜き
足を撃たれた兵の叫び声と同時に脇差しを突き刺そうとした瞬間
前に乗る兵の振り向きつつある横顔が目に入った
その者は銃声よりヒデカツに注意を向けていた
ヒデカツの手から脇差しが落ちた
「この者知っている!」
振り向いた兵の横顔は下方に流れヒデカツを呼んだ
「行かれよヒデカツ様!」
「お前はアラキ!なぜ気付かなんだか!」
「問答は無用で御座る!
拙者には分かり申す!
何も申されるな!
母を助けて下さった南蛮の薬の代金たった今お返しいたす!」
兄達との不仲を知るアラキ キヨシゲは感じ取っていた
何をとは言葉には出来ないが感じ取っていた
そして決断した
二人も乗っていたら当然馬の脚力は鈍る
馬を飛び降りたアラキは脇差しを拾おうとするヒデカツを気に留める事なく馬の尻を思い切り叩いた
「おさらば!」
アラキの姿が小さくなって行く
ヒデカツは既の所で間違いを犯さずにすんだ
だが差が生まれた
ほぼ無意識に予定した動作をこなしたアキヨリと
予期せぬ事態に予定の変更を強いられたヒデカツには
アクヤが橋に差し掛かる頃には五馬身程度の差が生まれていた
それは善意 人と人の誠の繋がりから生まれたものであった
だがそれは決定的な差であった
「どうやら切り抜けたな」
少し遅れたヒデカツを気にかけたアキヨリが振り向くと
兵達は何が起こったのかと右往左往するばかりで具体的に行動を起こすような者は一人としていなかった
「さて、待ち合わせ場所までの道程どうしたものか」
アキヨリが次の算段に思考を割こうとした時アキヨリの体は宙に舞った
ドッバアアアアア!!
父の教訓が脳裏を過る
「助かったと思った時が三途を渡った時ぞ」




