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六角の花   作者: フミ
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虎口

「お前等、無礼であろう!」


ヒデカツが身を乗り出しアキヨリに向けられた槍を振り払おうと突き出した手をアキヨリが遮った


「いや、当然の処置だ

ヒデサト殿からは俺を通すなとの沙汰なのであろう

ヒデカツはそなた等で城まで連れて行くがいい

そうすればヒデカツの安全も確保出来、下知に背く事もなく、そなた等に塁が及ぶ恐れもない

だが気をつけてくれ威勢は良いがヒデカツは足を怪我しておる

一度下馬するのは億劫であろう

空馬を横に着けてくれ」


槍を突き付けられはしたが問答無用に襲って来る気配は無い

馬を横に着ければアキヨリもヒデカツも注意を払うのは片側だけとなる

ヒデカツが騎乗した瞬間駆け出し橋まで辿り着けばなんとか突破出来そうだ

アキヨリは気の抜けた体を装い相手の油断を誘った

それは足を怪我していないヒデカツにもすぐ伝わった


「そうだな、兄上は下知に関しては厳格なところがある

お前達が咎めを受けたら忍び無い

俺は一人で戻れる

それより早く兄上の援軍に行ってくれ!」


援軍に人員を割けば更に突破は容易となる

だが最初に援軍に向かった者がヒデサトに辿り着けば当然アキヨリとヒデカツを捕らえろと命令され戻って来るだろう

そうなればもう遅いのだ

指揮官が兵を二手に分けるのを躊躇した場合でも馬が届き次第ヒデカツは駆け出す積りだった


だが指揮官は優秀だった


「申し訳御座らぬがアキヨリ殿にはもう一苦労願う

我等に従軍し援軍に同行して頂きたい

ヒデカツ様には窮屈で御座ろうが

一人で行って頂く訳には行きませぬ

兵の後ろに騎乗して頂き護衛もつけさせて頂く」


指揮官が顎で一人の騎馬武者をしゃくる様に指すとその者はアクヤの右脇に馬を寄せて来た


「くそ、中々上手くいかぬな

だがどうなろうと大して変わりない」


ヒデカツが舌打ちを慌てて引っ込めている隣でアキヨリはあるものを探っていた

それは自分を狙う殺気と火の気配


裏の仕事を請け負う者は表立っては現れない

この一団の中で息を潜め飛び道具で自分を狙っている

そしてそれが鉄砲なら都合がよい

アキヨリとヒデカツが逃げ出そうとした瞬間一斉に狙い撃って来るのだろうが

鉄砲を一丁でも暴発させ

〔逃げ出す〕〔発砲〕

の順番を

〔発砲〕〔逃げ出す〕

にするべく鉄砲の所在を探っていた

すなわち銃声の後逃げ出せば一瞬だが予期せぬ銃声に全員の注意を向けられ脱出の確立は飛躍的に上がる


アキヨリが火の気配を探る事が出来るのを知っているのはほんの一握りの人間だ

アキヨリの目に触れなければ鉄砲も安全だと認識しているに違いない

案の定火縄に着火する気配が一つ


「しめた!」


しかし次の瞬間アキヨリは戦慄した

火の気配は次々に四方八方に現れ合計十四

さらにその殺気は今にも引き金に移行されようとしている


「ヒデカツ!」


アキヨリが目でヒデカツの名を呼ぶと既に兵の後ろに騎乗したヒデカツも返した


「おう!!」


バアァァン!!


銃声はヒデカツが脇差しを抜くのとほぼ同時だった



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