↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六角の花   作者: フミ
PR
143/788

淡い期待

「アキヨリ!アキヨリよ!」


「なんだ!」


「なぜ俺を助け…いや」


「なんだ」


「川中衆!お前の屋敷に向かった俺の仲間はどうした」


「俺の家族を襲った奴等は一人も生きてはおるまい」


「お前と立ち合ったか?!」


「いや、リヨウだろう」


「そうか…すまぬ…すまぬ…皆…うっっ!うああああ!」


「畜生に殺められるは無念と申すか!

リヨウは誇り高き千年鷹の末裔にして我が弟ぞ!

謝るなら俺の家族に謝れ!」


「すまぬ、すまぬぅぅぅ!

おっ!お前の家族は無事か?!」


「ああ、命だけは皆無事だ」


「そうか、ああ…よかった…よかった…

俺はどうかしていた

そなたこそナリカワ家を継ぐに相応しいなどと多くの者に囃し立てられのぼせ上がっていたのだ!

恐ろしい!

父も兄も家臣達も!各々自分の欲の権化だ!

武家などというものはその欲が一塊りとなった魑魅魍魎だ!

俺はもうそんな化け物の中で生きて行くのは嫌だ

いや、生きているのも嫌だ

せめて、せめてだこの命で以て償わせてくれぇ!」


「都合のいい事をぬかすな!

お前などその魑魅魍魎の筆頭ぞ!

陥れられ仲間の血に塗れやっと思い直したのであろう!

思いのまま事が進んだならば終ぞ気づかなんだろう!」


「…返す言葉が無い…

なあアキヨリよ俺を助けたのはなぜだ?」


「お前の兄ヒデサトはお前が考えている程愚かでは無い

そして人を信じる機能が無い

お前を亡き者とするのに自ら出張ったのはその為だ

更に俺をすんなり見逃したのは自ら危険を冒す積りなどさらさら無いのと俺を逃さぬ自信と備えがあるからだ!

この山は粗方多くの兵で封鎖されている

その囲みを破るのにお前が要る

それだけだ!」


ヒデカツには淡い期待があった

それはアキヨリが自分を助けた理由

親友と呼び合った男の心に未だ友情が燻り続けているが故の行為だったのではないか

だがそんな期待を抱いた事を自嘲し

その自嘲がヒデカツ本来の怜悧な判断力を蘇らせた


「ああ、糞兄貴は邪魔な俺を殺してアキヨリお前にその罪をなすりつけようとしたのだろう

そしてその手引きをしたのはヤノスケだ

よくよく考えればあやつの言動不自然極まり無い

俺も道化だ!

全ての元凶は父ヒデミツがその弟ヒデヒサを誅殺しその償いにヒデヒサの子を養子とした事だ

ああ、ついに終わったのだ!

実の父の兄から父親の愛を求め続ける日々が!」


「ヒデカツ!!」


「何も言うなアキヨリよ周知の事実であろう!

人を信じぬヒデサトは兵達には真相など明かすまい

兵達は俺の仇であるお前を討ちに来たと信じ込んでいるだろう

俺を殺した筈のお前と俺が揃って現れたら自分の頭でものを考えぬ者共はどんな顔をするか見ものだ!」


「油断は出来ぬ

裏の仕事を請け負う者を潜ませているに違いない

一筋縄では行かぬぞ!」


「ああ、お前こそぬかるなアキヨリよ

お前はまだ生きねばならぬ

お前を待つ者がいる!」


ヒデカツは禊ぎの機会を与えられたと感じた

それはこれからアキヨリを襲うであろう闇の人間の扱う暗器

その暗殺の道具と親友の間に位置する事

親友を待つ者の所に無事送り届ける事


「俺の穢れの上っ面くらいは剥がれるだろうか」


ヒデカツが身体を反らせアキヨリの肩から跳ね飛びアクヤの背に跨がると

自分を抱えていた肩越しに山道を覆い尽くす一団が見えた



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。