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六角の花   作者: フミ
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逆鱗

初めて聞く声だった

少しだけ言葉が不自由なゲンや言葉にはならないが声を発する事の出来る他の皆と違いチョウキチは声自体発する事が出来なかった


アキヨリがリッカの屋敷に来てすぐの頃チョウキチが厄介な風邪をひいてまだ仕事の出来ないアキヨリが看病した

高熱にうなされ意識も混濁しただろうチョウキチが呻き声一つ出さない様にアキヨリはチョウキチに一体どれだけ辛い事があったのかと心を痛めた


そのチョウキチが雄叫びをあげているアキヨリは喜びに似た感情を覚えた

だがそんな悠長な事態では無い

火縄銃は取り扱いの知識が無ければ銃弾を発射する事が出来ないばかりか射手の命を脅かす物だ

銃身に籠める黒色火薬が規定の量を超えれば銃身は爆発の威力に耐えられなくなり銃自体が強力な炸裂弾となり射手の身体を破壊する


運良く暴発しない場合も銃身の火薬に引火させる為の火皿の火薬の爆発を目を閉じて眼球を守らなければ高確率で失明する


アキヨリは実際に遠距離から主君オアイを狙撃しようとした乱破の者が射程距離をギリギリまで伸ばそうと火薬の量を欲張ったのだろう

銃身を暴発させ右半身を吹き飛ばされた骸を真近で見た事がある


陶芸職人のチョウキチが火縄銃や黒色火薬の知識など持ち合わせているはずは無い

それを証拠に火皿には山盛りに火薬が盛られている


「チョウキチ!撃つな!引き金をひくな!!」


大切な家族の命 長年培った至宝と呼ぶべきチョウキチの陶芸家としての技術

それが一瞬にして失われようとしていた


「げ!下郎!!撃つな!」


狙いを定められたノブハルはそのまま馬を走らせるのが銃弾を回避する確率を上げる一番の方法であるにも関わらず

手綱を力任せに引っ張ってしまい馬を急停止させてしまっている


「間に合ってくれ!!」


アキヨリはチョウキチの火縄銃の温度変化に全神経を集中した

無数の歯車が火縄銃から放射状に伸びていく


「うあ!うわああ!!」


パァァァァン!!


乾いた炸裂音が響いた

アキヨリの声はチョウキチには届かなかったのか

アキヨリの操炎術により爆発は広範囲に広げられチョウキチを襲う威力は弱めら銃身が炸裂する事も避けられたようだ

だがもうもうと煙が立ち込めチョウキチの無事はなかなか確認出来ない


「ふぁ!うわぁ!うわあああ!」


アキヨリが声の方に視線を移すとたチョウキチが爆発より五歩程下がった所にゲンとリヨウに背中を引っ張られ尻もちをついていた


「よかった!

ゲンありがとう!リヨウよくやった!」


一難去ったアキヨリは馬にぶら下がった青二才を取り押さえようと視線を移すと同時に駆け出した


一難去ったのはノブハルも同じようだ

アキヨリの接近には気付きもせず

尻もちをついたチョウキチを見て嘲け笑った


「ふははは!

脅かしやがって畜生!

畜生と言えば畜生だな人間かと思ったが言葉も無しに呻いているだけだな

ワァーグワーだぁ?

牛か?山羊か?それとも豚か?

ふははは!

は?!!!!!!?」


ノブハルの視界は急激に変化した

意識はその変化について行けず無数のいく色もの線を見るだけである

やっと変化が落ち着くと右半分の視界はただ黒い闇で左目には小石が二つ映った

そして地獄の鬼のような声を背中に浴びた


「よくも言ってくれたな!

家族を守る為勇気を振り絞り恐怖に打ち勝ったチョウキチの雄叫びが獣の呻き声だと?!

もういっぺん言ってみろ!!」


ノブハルの腕と肩に今まで経験した事の無い激痛がねじ込まれた



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