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六角の花   作者: フミ
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疾風怒濤

工房の窓はゴクラクサイの設えで格子戸とギヤマンがはめ込まれた明り取りの窓が交互に合計八つあった

格子戸には開閉可能な雨戸が合わせて設えてあり軽く汗ばむ陽気に全て開けられていた

その格子の隙間から巻き物は外へと飛んでいった

格子戸からは外の様子を伺うのは逆光だったせいもあり困難であった

ソヤカは巻き物の行方を追いギヤマンの窓に目を凝らした

当時の板ガラスは全くの平面ではなくなだらかな凹凸があり

歪んだ景色ではあるが外の様子は確認出来た

そして見た

歪んだ巨鳥が疾風となり巻き物を咥え通り過ぎるのを


「やってくれたね!

始めから狙いはこれだった!ん!!」


ソヤカは間一髪アキヨリの槍から放たれた火炎を首を横に振って除けた


「義母上油断大敵で御座る!

このアキヨリを向こうに回し余所見するとは注意散漫!」


「何をする気だい?!

どう足掻こうがわたしには敵わないのがまだわからないのかい!」


「義母上は勘違いをなさっておられる」


「どういう意味だい?!」


「さあ?」


勝利の条件

アキヨリが戦いに望むに第一に考えるのはそれだ

孫子に習い大勝ちを狙わず小さな勝ちを連ね

負けない事を信条とする彼は己の勝利の条件を満たす以上の事は望まない

多くを望めば必ず足元をすくわれる


「此度の俺の勝利の条件は義母上を倒す事では無い

距離を取り家族全員でこの山を離れる事だ

先程俺が義母上と間合いを広げた時 義母上はそれを詰めて来た

つまりある程度の距離を取れば少なくとも直接的な攻撃は受けないということだ

そしてリッカがこの山から離れられないと言っていた事から

御山の守人の守ってきた山とはこのホウライ山だという事は間違いない


さらにリッカがこの山を去れば

義母上はこの山を離れられんだろう

策を練り準備に時間をかければ覆せない実力差ではない


それに引き換え義母上の勝利の条件はリッカを傷つける事なくこの俺から奪わなければならないのだ

そう考えればなんと楽な勝負だ


そうだな迫り来る千の軍勢を使って足止めが出来るかも知れん

いやいや、欲張り過ぎだ

今は目の前に集中せよ!」


「何をブツブツ言ってるんだい!」


「さあ?」


「何を企んでいるか知らないが

さっさとかかっておいで!

この手で握りつぶしてやるよ!」


「ならば早速!」


ドカッ!!ガラガラガラガラ!


始めに登窯の方から何かが強くぶつかる音

続いて何かが崩れる音


「これは我が怒濤の片腕アクヤが登窯の壁を蹴破った音で御座る!」


バサッバサッ!ビュュウウウウウ!


そして何かが煽られ突風の吹く音


「これは我が疾風の片腕リヨウが恐らく拙者の剪定した燻る庭木の枝などを煽り燃え上がらせんとした音で御座る!」


ボワッ!ゴワアアアァァァ!


「最後に燃え上がる炎に巻き物が投げ入れられ拙者の術が完成した音で御座る!」


ゴワッシャアアアァン!


工房の屋根を突き破り瓦や木材を巻き上げ巨大な炎の竜が現れた



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