必勝の策
「調子に乗るんじゃないよ!」
メキメキッ!メキッ!
今度は目にも耳にも感じ取れた
ソヤカの怒りが形となったのか
アキヨリの周りを小さな氷の粒が取り囲むと
それらは空間にひびが割れるように繋がり合いアキヨリに迫って来た
アキヨリはそれを目を見開き只見つめている
「アキヨリ様!どうしたのです!
これはただの氷ではごいません!
空気が氷っているのです!
触れればただではすみませぬ
アキヨリ様!」
アキヨリが炎を操ろうとする時
あらゆる物が小さな極小さな歯車の集まりに見える
熱い物は歯車が高速で回り
冷たい物はゆっくり回っている
アキヨリが「近づけ」と心の中で念じれば歯車が近づき合って噛み合いその回転が伝わって行くのだ
逆に「離れろ」と念じれば歯車が離れあって
周りの歯車を回す事に力を奪われていた元々回っていた歯車は目にも止まらぬ程の早さで回りだす
つまり炎を熱を操ると言う事は歯車同志の距離を操作する事であり
熱い冷たいは触らずとも回転の早い遅いで見る事が出来る
「なるほど先ほどの術もこうやって見抜けば良かったのだな
しかし始めてだ
完全に止まった歯車を見るのは」
「何を言っているのです!
歯車がなんだと言うのです!」
「案ずるなリッカ!
俺は胸が躍ってさえいるのだ!
そぅりゃ!」
左腕でリッカとトウカを包み込み
槍を扱うのは右手だけであったがアキヨリの槍は冴えに冴え渡った
ゴババッ!ゴバッ!ゴバババ!
アキヨリの槍は踊り狂い止まった歯車とぶつかり合うと
その度に焼けた鉄を水に突っ込んだ様な音を響かせた
彼の右腕は空に文字を書く様に軌道を描き
五本の指はそれぞれ独立した生き物の如くのたうちまわった
槍はそれらの従順な僕と化した
「はっ!」
最後に一閃槍が薙ぎ払われると全ての氷は姿を消していた
「次っ!」
「言われるまでもないよ!」
アキヨリの槍の炎を見て これだけの術で事が済むとは思ってはいなかったソヤカであったが
あまりにあっけなく術を掃討され驚きを表していた
その隙を見逃さずアキヨリは前に踏み出さんとリッカを抱え前傾姿勢をとった
「くっ!来るなら来るがいいさ!」
ソヤカが身構えると先ほどの前傾姿勢とは逆に
トン、トーンとアキヨリは後ろに二歩飛び退いてソヤカとの距離をとった
「息が切れたのかい!
逃がしゃしないよ!」
ソヤカはアキヨリの開けた間合いと同じだけ詰め寄り再び術を放った
ゴババババババッ!
再び止まった歯車と青く燃える槍の応酬が始まった
今度は波状的にソヤカの術は途切れる事なくアキヨリに襲い掛かった
休む事なく襲い掛かる氷のひびをさばき続けアキヨリは息を乱し汗をかいた
一方対象的にソヤカの息の乱れは怒りによるものだけらしい
このまま続ければ勝敗は明らかである
しかしアキヨリは笑った
「我必勝の策を得たり!」




