無敵の男の無敵の愛
トウカのねんねこから放たれた火花の閃光はアキヨリの目に焼き付いた
予想以上の熱と光であった
トウカを護りたまえ
トウカに害を加える者の力をそのままトウカを護る力とせよ
ねんねこの呪文に込められた念はこの二つ
つまりリッカの母ソヤカが呪文に触れ激しい熱と光で拒絶された事は
彼女の目的までは分からないがアキヨリの概念ではトウカの敵であり
なおかつ強大な力を持つという事になる
工房に充満していた羽が姿を消している事は音の響き方や空気の流れから分かっていただけに視力の回復がもどかしかった
薄目を開けると顔を背けた為に閃光の直撃を避けた右目にぼんやりと工房内の様子が見えて来た
まず見えたのは横一文に構えた自らの槍
先ほどは飛び退いたつもりだけで実際には動けなかったが実際に構えてる
体の自由は効くようだ
槍のすぐ前にはリヨウの後頭部
ねんねこから放たれた閃光にアキヨリの視力が奪われたのを察知し
庇うように前に立ちはだったのだろう
だがアキヨリはそれらに視線を向けていた訳ではない
視力の回復する前から
いや工房に入ってリッカの声を聞いてからずっと
羽や目に焼き付いた光それら遮る物など関係無く彼の視線は最愛の存在に向けられていた
「リッカァァァァ!」
うつむく横顔を回復したアキヨリの視力がとらえた瞬間彼の何かが弾け飛んだ
アキヨリの声と視線に気付きリッカは咄嗟に背を向けたが
確かに見えたリッカの白過ぎる肌が
およそ生きとし生ける者の肌では無い
小さな刺し傷でも動脈を傷つけてしまうと大量の出血に止血が間に合わず死に至る場合がある
体の殆どの血を失ったのだろう
アキヨリの手を握り締め
血の海に人形の様に白くなって沈んで行った
叔父ナリマサの死に顔と今のリッカが心の中で重なり合い
衝動と呼ぶには生易しいものが彼の精神を突き上げ
突き上げられた勢いそのままに自らの体をぶん投げるが如くリッカに向かい飛び放った
「アキヨリ様!!」
背を向けていたにも関わらずリッカはアキヨリの突進が感じ取れた
突き刺さって来たのだ彼の自分に向けられた全てが
その愛の塊が身を隠す事だけを考えていたリッカを意外な行動に走らせた
リッカはアキヨリに向かい両手を広げ己の今の全てをさらけ出した
「アキヨリ様!逃げて!
わたしは見ての通りの化け物です!
あなたをずっと騙してました!
わたしはあなたが命懸けで護ってくれるような存在では無いの!
逃げて!トウカを連れてぇぇいいああああ!」
だがリッカはすぐに耐え来れなくなったのか跪き顔を両手で隠し嗚咽し始めた
「逃がさないよ!」
怒りに我を忘れ唇をただ震わせていたソヤカは
異常なリッカの姿に放心し立ち尽くすか
おそらくはリッカの言葉通り逃げ出すであろうアキヨリの逃亡を阻止しようとその姿を探す為に
放心する程の怒りにより遥か彼方に合わせた視点を工房内に戻し
予想した逃走経路をなぞった
だが彼の姿はどこにも無かった
「義母上!このアキヨリ逃げも隠れもいたさぬ!
その代わり義母上にはお引き取り願う!
嫌と申さればシジマの秘術の数々で正々堂々お相手いたす!
とくと!とくと!御覧じろ!!」
リッカはその声を耳のすぐ側で聞いた
あまりの大声に耳鳴りがして
あまりの嬉しさに涙がとめどなく溢れた
涙を拭い目を開けると愛おしい二つの顔が同時に現れた
リッカはアキヨリの腕の中に
アキヨリとトウカの間に
ただアキヨリとトウカの間に




