酬い
目に入るリッカの全てがチョウジロウを破裂させた
「ちくしょう!ああ!ちくしょう!
なんだよこれ!なんでなんだよ!
落ち武者じゃねえか!
なんで落ち武者がこんないい女抱けるんだよ!
ふざけんじゃねえ!
俺は命懸けで戦って汚ねえ仕事も進んで引き受けて
泥ん中這いずり回ってやっと侍になる為 上役の家に婿に入って
オカメみてえな娘をあてがわれたんだ
醜いだけならまだしも朝んなるまでシクシク泣いてやがった
暗れぇ暗れぇ女だ
なんで俺だけが貧乏くじ引かされんだ!
大名の息子なら落ち武者になったっていい女が寄ってくんのかよ!
ふざけんなメチャクチャにしてやる!
なんだか分かんねえが何かが迫って来てんだ
俺には分かるんだ!
この第六感で修羅場をくぐり抜けて来たんだ
ヒデカツは汚れらんねえ男だ
無事にこの仕事を終えたって親友殺した事を知ってる俺を生かしておく訳ねえんだよ!」
「狂ってる!何なのこの男?!」
ガシャン!
リッカは近くにあった壺をチョウジロウに後退りしながら投げつけた
「どうせ死ぬんだ!どうせ死ぬんだ!
うわああああ!」
「アキヨリ様!アキヨリ様助けて!」
ガシャン!ガチャン!ガチャン!
手当り次第に皿やら壺を投げつけたがチョウジロウは止まらなかった
「痛いっ!!!!!」
リッカの胸を痛みが走った
割れた陶器のかけらが跳ね返ったのだと思いたかった
だが人間が投げつけたくらいでそんなに跳ね返る訳はない
リッカの左の胸をチョウジロウの右手が鷲掴みに掴んでいた
「ああああああああああああ!
アキヨリ様!アキヨリ様!
わたしの胸アキヨリ様の胸!
もう見つめてもらえぬ!
触れてもらえぬ!
許さん!許さん!許さん!許さん!
うああああ!」
ガシャャャャン!
また何かが床に落ち粉々に砕けた
その様子をチョウジロウは只見ていた
それは酷くゆっくりに感じられた
破片が各々受けた落下の力を使い終え飛び散った
チョウジロウはその一つ一つを確認していた
「あれは親指、
あれとあれは手首か、
あれは人差し指だな、
薬指はどこだ?
だったら俺の腕は今どうなっているのだ?」
チョウジロウは恐る恐る右腕を持ち上げ視界に入れようとしたが
一行に自分の腕は見えない
代わりに赤黒い氷のかたまりが見えた
チョウジロウの肘から先は無く
ただ赤黒い氷がくっついていた
「腕!俺の腕!
うわあああああああああ!」
「もうどうなってもかまうものか!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやるぅ!」
リッカの肌にまとまりついた汗が宙に舞ってキラキラと光を反射した
凍っているのだ




