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六角の花   作者: フミ
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秘めたるなにか

包囲されていると言っておきながら

姿を現したのは今のところ登窯の裏手からの一人だけである

しかも鉄砲などの飛び道具も持っていないし

リッカからは充分距離があり母家に逃げ込む事は難しくは無いと思えた


登窯から母家まで続く屋根のついた渡り廊下をリッカは息を切らし走った


「待てー!」


侍の声は遠い安心など出来る訳では無いが少し考える余裕のようなものが出来

リッカはこの事態を理解しようと思考を巡らせた


「アキヨリ様が言ってたわ

ヒデカツ様のお父様がアキヨリ様を危険視してるって

アキヨリ様のどこが危険だって言うの!

なぜ放っておいてくれないの!

あの人は充分苦しんだのよ!

渡すもんですか!

権力の亡者になんかアキヨリ様を渡すもんですか!」


事態の把握は激しい怒りに中断された

リッカは立ち止まり振り返り追ってくる侍を睨みつけた

戦おうというのか

飛び道具は無いといえ太刀、脇差の大小で武装した戦闘を生業とする人間を

陶芸の仕事で並の女性より腕力があるとはいえ

丸腰のリッカが戦おうというのか

だが彼女は微塵も恐れてはいないようだ

むしろ獲物を狙う捕食者のようにも見えた


「誰も見てないわ

もうかまうもんですか!」


誰も見ていないとはどういう事だろうか

だがリッカは背中に叫び声を聞いた


「リッ!リッがー!はやぐ!」


振り返るとゲンとタノスケが

ゲンはアキヨリの槍を

タノスケは太刀を持ちリッカを呼んでいた

二人とも手が震えている

武器など持った事も無い二人が勇気を振り絞り守ろうとしているのだ

ここにある全てを

彼等にとって全てであるここにある全てを


「お願い!戻って!二人とも!

ああっ!」


リッカの目には屋敷の裏手から迫る二人の侍が見えた

ニヤニヤ笑っている

ゲンとタノスケの不馴れな様子を笑っているのか

リッカは更に怒りを燃え上がらせた


「わたしはシジマ アキヨリの妻

シジマ リッカ!

人質とするならわたしになさい!

力ずくで何でも思い通りになると思っている愚かな侍共!

ついてこい!」


回り込むように庭を通り再び工房に向うリッカを

ゲンとタノスケも追いかけようとしたが


「おい!お前は女を追え!

俺はこのへっぴり腰共の相手をしてやる」


後から現れた侍の一人がゲンとタノスケに襲い掛かってきた


「おら!おら!どうした!

二人掛かりでそのていどか!」


「ううっ!ああっ!」


馬鹿にされ悔しさを滲ませる二人だがどうする事も出来ない

二人は次第に追い詰められて行った



工房に辿り着いたリッカは後ろ手に戸を閉めつっかえ棒をかけた


ドンッ!ドンッ!バギャャン!


先に現れた侍が戸を蹴破り工房に侵入してきた


「足掻いても無駄だ!

ヒデカツ様から女に手を出すなと言われているが

手間をかけさせるようなら容赦せんぞ!」


「ヒデカツ?!

ヒデカツ様はアキヨリ様の親友だったんじゃないの?!」


思考も動作も動揺に縛られたリッカに侍が迫ってきた



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