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六角の花   作者: フミ
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羽化の兆し

たった今からあの桁外れの一騎打ちの傍観者から当事者にならねばならない

恐ろしい恐ろしくてたまらない

生き死にの恐怖もあるがヒデカツの恐怖はそれだけではない

その恐怖とは


かたちになるのか?


形になると言う意味は第三者から見て勝負に見えるか

という意味である

アキヨリの鼻歌交じりの槍の一振りで自分は粉みじんに吹き飛ぶのではないか

ナリカワ家は天下を取り

父は関白なり征夷大将軍になり歴史に名を残すだろう

当然自分の名も天下人の子息として記される

アキヨリとの一騎打ちが形にならなければ自分は永遠に世の人々の笑ものとなるのだ


だがそんな訳は無いのである

一騎打ちなどする必要は一つもないのだ

そのヒデカツの思い癖はあの一騎打ちの鮮烈な印象故か男子としての自尊心故か


十五丁の鉄砲の一斉射撃で一瞬でかたがつく

鉄砲とはそう言った物だ

強者だろうが弱者だろうが鉛玉の前では平等に涅槃の住人となるのである

あの桁外れの武勇を誇ったアカイ タネフサも全身に銃弾を浴び絶命した


それを骨身に染みて心得る例の九名の一人が

正体を失ったヒデカツに見切りをつけ自らの鉄砲に火薬、弾丸を装填して火縄に火を付けた

事情を良く把握していない者もこの非常事態の脱出口を求めるようそれに習い自らの鉄砲に火薬を詰め始めた


その時である拳大の石が社の格子状の扉を破壊して

ヒデカツのすぐ横をすり抜け御神体の台座にめり込んだ


アキヨリとアクヤの鼻には点火された火縄の臭いが漂って来ていた

投げつけた石に相手がどう出るか社の扉を注視する彼の鼻には小便の臭いが漂ってきた


彼が生まれたばかりの我が子を胸に抱いていて

鉄砲を相手にこれ程積極的であり攻撃的であるのは理由がある

それは腰の三本の巻物である


それさえあれば瞬時に社に立て篭もる武装した集団の予備の火薬を着火させた上に

社を燃え上がらせ万が一死に際の反撃があったとしても自分は自由に動け弾丸を回避するなり

相手が構える前に鉄砲の火薬に火を付け暴発させるなり明後日を撃たせる事ができ

磐石の体制である為だ


「あくまで黙りを決め込む積りか…」


アキヨリは巻物を手にした

その時である

社の扉は静かに開きヒデカツが姿を現した

その表情は穏やかだった



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