緊急連絡(1)
三月二一日のことだった。この日の職員会議で定期異動の転出・退職者と転入・新任者が公示された。
なんと、田村先生が親の介護のために退職されるらしい。それにはかなりびっくりした。確か、定年まであと七、八年ほどだったはずである。
また、私の教育事務所への出向もかなり驚かれた。あとは大室先生が指導主事として、県教育委員会へ出向することになったことも話題となった。他の学年も合わせた学年全体の転出・退職者は七名、転入・新任者も同じく七名であった。
翌日は金曜日であったので、職員全体で送別会をすることとなっていた。この日は修了式があり、一・二年生も授業が終わり、春休みに入った。
なので、職員室には開放感が漂っていた。しかし、突然、送別会は中止となってしまった。とんでもない事件が起きたからである。
あれは修了式も無事に終わって、給食もないのでたまには外で昼食を取ろうとして、三年部の先生で外に出ようとしたときだった。
「緊急で全職員にお伝えしなければならないことがありますので、しばらく職員室に待機しておいて下さい」
教頭がすごく青ざめた顔をしながら、職員室中に響く大きな声で言った。瞬時に職員室全体に緊張感が伝わった。そして、そうとう悪いニュースが伝えられるに違いないと職員室にいた全ての教員たちが感じた。校内放送でも教頭は同じようなことを言っていた。
「緊急で全職員にお伝えしなければならないことがありますので、しばらく職員室に待機しておいて下さい」と…
校長もかなり青ざめた顔をして、教頭に「これは紛れもない事実なんですか?」と聞いていた。教頭も校長に対して
「私もあまり信じたくないですけど、これは紛れもない事実です。確認も取りました」
と答えていた。そして、教頭は全教員がそろったのを確認していた。そろったことがわかると、校長を見てうなずいた。
「お忙しい中、急に集まって頂き、ありがとうございます。それでは早速ですが、校長先生、よろしくお願いします」
「はい、つい十分ほど前ですが、三年三組の磯部さんのご両親から大変残念なお知らせが入りました」
その瞬間に他の学年の教員から三年部へ視線が集まる。それは一瞬のことであったが、福井に取ってはそれだけでも苦痛であった。
「磯部さんが自分の部屋で倒れている所をご両親が発見されました。揺さぶっても意識が戻らないので、そのまま救急車で搬送されたそうです」
もう視線は向けられていないが、今度はにわかに職員室がざわつき出した。あまりにも想定外のことが起こってしまったのだ。校長もそれが分かっているのか、わざわざ止めること無く、ざわつきのある中で報告を続ける。
「部屋には本人が飲んだと思われる薬のパッケージが大量に発見され、病院でも治療の際、大量の薬を飲んだことが原因と分かりました。薬を分析したところ、睡眠薬であったため、彼女が自殺を図って飲んだと医者は考えているようです。幸い、彼女は一命を取り留めたものの、まだ予断を許さない状態です。なので、本日予定されていた送別会は中止して下さい。幹事さんには悪いですけど、事情が事情なので仕方ないと思います。連絡は以上です」




