15年前の卒業式
卒業式の日、久々にKが学校に来た。一一月末に保健室にも来なくなったと聞いてから、彼女が学校に来たのは実に四ヶ月ぶりである。
話によれば、Kのクラスの担任が何とか説得して、Kはやっと卒業式に参加する気になったらしい。
久々に見た彼女は少しやつれていたものの、そこまで変わっていなかった。目立つのは髪が以前よりも伸びていたぐらいか。もちろん、高校入試なんか受けているはずもないだろうから、来年は高校浪人をすることになるだろう。
許されない恋愛をすると、こんなにも人生が狂ってしまうのだと子供ながらに思った。本当だったらKは○○高校をうけて、二日後の合格発表を待つのみ状態であったはずなのに…。
もし、塾に「川口」と言う講師がいなかったら、Kはこんなにボロボロになることはなかったと断言できる。
卒業式はそれほど感動することもなければ、泣くこともなく終わってしまった。女子の中には大泣きし合って仲間との別れを惜しむ者もいたが、演技っぽく見えて、とてもうさんくさく思えた。
それよりもKが周りから腫れ物にさわるように扱われていて、ずっと一人ぼっちだったのが、よっぽど痛々しく思えた。
彼女は泣くでもなく、笑うでもなく、怒るでもなく、全く表情を変えることなく、心ここにあらずの状態だったように感じた。
確かにあのときKは卒業式に参加していたはずなのに、誰とも「中学校を卒業する」と言うことを共有することなく、一人さびしく学び舎を去っていったのである。こんな悲しくてつらいことを目の当たりにすれば、他の全てがうさんくさく見えて当然であった。




