15年前の特待生合格(2)
でも、同時にすごく不安だった。つい半年前まで勉強なんか全くできなかったのに、わずか半年ぐらいの努力でこんなに成績が伸びていいのだろうか?
もしかしたら全ては幻で、私は未だに下の方で必死になってもがいているのではないか。あまりにもひどい現実を受け入れられないから、勝手に都合のいい世界を作り出して現実逃避をしているのかもしれない。
もはや、何が本当で何が嘘なのか分からなくなるほどだった。この半年であまりにもたくさん大きな事件や出来事が起こり過ぎたのだ。それこそ、自分の根底を覆すような大事件が次々と起きた。何を土台として生きていけばいいのか、本当に分からなかった、あの頃…。
今思えば、何であんなにとんでもないことが次から次に起こったのか…と不思議に思う。これまで三〇年ほど生きてきたが、初恋の人が塾の講師と付き合っていたり、母の浮気が発覚したり…とよくもまあ立て続けに大きなスキャンダルが続いたものである。
大人になったら、スキャンダルまみれのことにちょくちょく遭遇するのか…とさえ考えたっけ…。あの時期を除けば、磯野あおいに出会うまで私の人生はずっと平和だった。
そのような不安が顔に出ていたのだろうか? 学校や塾で先生や講師から「受験前だから不安なのか?」とか「体調が悪いのか?」とか心配されるようになった。
私立一般入試で学校が休みとなったので、塾に行って自習をすることした。家だと過去の嫌なことを思い出すことが多いので、自習は極力塾や図書館でするようにしていたのだ。そのとき、突然塾長に呼ばれた。そして、そのまま塾長に連れて行かれた。塾長室に入った時、去年の一二月のことを思い出した。
「まあ、そこに座って…」
前と違って、ぞんざいな感じだった。まあ、前と違って隣に母がいないから当然である。
「まずは××高のB特待生合格おめでとう」
「ありがとうございます」
まさか、塾長直々にそのようなことを言われるとはこれっぽっちも思っていなかったので、かなり意表をつかれた。
「何を不安がっているのか知らないけど、福井君はすでに××高のB特待生合格をしている。ここは○○高を狙う連中もたくさん受けている。その中から君は合格を勝ち取ったんだ。これは君が夏休みから誰よりも頑張ってきたから得られた結果だよ」
さっきは意表をつかれたが、その割にはありきたりなことを言うので内心がっかりした。そんなことはすでにいろんな人から言われている。




