15年前の特待生合格(1)
年末年始の冬期講習前に出された広告には、確かに私が使われていた。あるときは新聞の一面広告にも載っていてびっくりした。
塾の広告には卒業生を使うことはよくあるが、まだ現役で塾に通っている中学生を高校受験の広告に使うことはかなり珍しいことであった。それで、この広告はかなり話題になった。
また、わずか四ヶ月でほぼ最下位からトップクラスになった成績表も、同じようにかなり話題になった。あまりにも急に成績が上がっているので、偽造の疑いが出たほどである。
それで塾長が疑いを持ったマスコミに対して一つ一つ説明していたほどであった。ときには当時通っていた中学校の先生や生徒がモザイクの入った顔で、偽造でないことを話している場面がテレビで流れたこともあった。
もちろん、現役で塾に通っている生徒の成績表を使うこと自体が前代未聞であり、すごい反響を呼んだのである。これにより、私が通う塾に冬期講習を希望する生徒が殺到した。また、そのまま三月まで塾に通うことになった人もたくさんいた。
そして、二月になった。この年はいつになく雪のちらつくことの多い年だった。いろいろ考えた末に、まず私立の特待生試験を受けることにした。私立の特待生に合格できるなら、安心して公立入試で○○高校を受けられるだろうと思ったからである。
私立の中でもわりと家から近くて大学進学にも力を入れている××高校の特待生試験を担任から勧められたので、それを受けることにした。その話を親や塾講師たちにしたところ、「いい選択だ」と言われたのも私の背中を後押しした。
その結果、私は××高校のB特待生に合格した。この学校はA特待生とB特待生があり、A特待生だと全てが免除されるが、B特待生だと入学金と学校維持費は支払わないといけない。つまり、Bの場合は月々の授業料のみが免除となる。
ただ私立だと授業料だけでも月四〜五万はかかるので、授業料の免除があるだけでも大きかった。維持費は月々一万円であったから、これだけなら公立並みのお金で通うことができる。
つまり、これだけでもうちの母親は泣いて喜ぶ内容であった。また、A特待生五名ほど、B特待生二〇名ほどしか合格者がいない中で、合格できたのもうれしかった。この特待生試験を受ける人の中には○○高校を狙う連中がたくさんいるので、この結果は大いに喜べる内容であった。
この合格を受けて、公立は○○高校を受けることにした。かつては雲の上にあって見えもしなかったものが、今はあと少しでつかめそうな所まで近付いてきている。
全てはKを好きになったことから始まった。少しでもKに近付きたくて始めた勉強。毎日、図書館にも通った。Kと同じ塾にも入った。ひょんなことからKは川口先生が好きであることがわかり、完全な片思いであることを知った。
家では父も母も浮気していたことが発覚した。そこからは勉強は嫌な現実を忘れるための手段となった。何かを覚えている間は現実から目を背けることができる。だから、何時間でも勉強ができた。そうしないと現実に押しつぶされて気がおかしくなりそうだった。




