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教員としての「芯」を問う

 二月一日、前夜から降り出した雪が見事に積もった。この日は私立の特待生や専願の試験日であった。そのため、三年生は休校であった。


 この日、約半分の生徒が受験に臨んだ。ただ、朝からの大雪で交通が混乱したため、多くの学校で試験開始時間を遅らせる措置をとって、混乱を最小限にしようとしていた。


 この前の日曜、磯辺は今までで一番うまい絵を描いた。土橋の話では彼女はもともと人物画が得意とのことだった。


 しかし、彼はそれだけではこの絵の飛び抜けたうまさをうまく説明できないと言っていた。他の美術部員もあまりのうまさに驚いていた。モデルをしていて分かったことだが、磯辺は誰よりも楽しそうに絵を描いていた。


 そんなことをZ高校側が用意してくれた中学校教員待機室で待っている間、ぼんやりと考えていた。窓の外の雪は未だに止みそうになかった。


 これから先、磯辺はどうなっていくのだろうか? 確か、田村先生の話では私立特待や専願は受けないと言っていた。私立一般と公立一般を受けるようである。


 一人の人間の立場で言わせてもらえれば、磯辺のことなんてもう考えたくなかった。彼女と出会ったことで一気に十年分ぐらい余計なことに気を遣ったし、余計な苦労もたくさんした。とにかくもう疲れてしまった。もう、しばらくは生徒と接することも嫌になるほどであった。


 多分、田村先生や土橋にも余計なことで気を遣ったし、余計な苦労もしただろう。でも、彼らはそれでも生徒と接することが嫌になることはないだろう。


 中には大室先生のような人もいるが、多くの教員は何があっても「芯」の部分がぶれないのである。だから、多くの先生はどんなにつらいことがあっても、この仕事を続けられるのだろう。


 それに引き換え、私ときたら、「芯」の部分が完全に折れてしまっている。このまま、無理に教壇に立ち続ければ、きっと生徒を苦しめるだろう。その姿を見て、私はもっと苦しむことになる。そうなる前に一回、ここを離れる必要がある。


 そして、自分をもう一度見つめ直そう。本当に自分は「この仕事をやりたくてやっているのか?」、それとも「教育学部を出て、たまたま教員免許を持っていたから、この仕事をしているのか?」。


 それを厳しく問い直そうと思う。そして、もし前者の答えが出たら、何年後かに再び教壇に戻ろう。もし、後者の答えが出たら、そのときはすっぱりと教職を辞めて、新しい仕事を一から始めようと本気で思った。


 いつの間にか、私は寝ていたようである。もう、試験も終わり、生徒たちが次から次に校舎から出て行く。


 それで今まで静かだった校舎はにわかに騒がしくなった。私はあわてて外に出て、自分の学校の生徒に「入試はうまくいったか?」とか「入試お疲れさん!」などと声をかけた。


 朝から降っていた雪もすっかり止んで、少しだが晴れ間も見えた。試験から解放された生徒たちの顔は思いのほかに明るくて、私も少しだけ明るくなれた気がした。まあ、それも束の間であろうけど…。

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