15年前の県下一斉テスト(1)
あれは一一月中旬のことだったと思う。最後の県下一斉テストを控えて、三年生の教室はピリピリとした空気に完全に支配されていた。このテストの結果で最終的な志望校が決定することになるからである。
また、このテストが内申書の内容に反映される最後のテストであることも大きかった。この県の公立高校入試は、三年生のときの成績がわりと入試に大きく反映するシステムが取り入れられているからである。高校入試での一発逆転は許されないシステムになっていて、中学校三年間の成績が半分ほど高校入試の合否に反映されるのだ。
さすがにこの頃になるとKのことや川口先生のことを口にする人はいなかった。みんな、それどころでない。このテストで、今後の方向性がある程度決まるからである。
最終的なことは実際の入試で決まるとは言っても、このテストで今後の大枠が決まるとなれば、否応なしに緊張は高まる。
「おい、Kが学校に来なくなったってよ」
「いや、保健室にいるだろう? 最近は教室にまったく行ってないみたいだよ」
「そんなことを知っているよ。だから、保健室にも来てないんだって! 保健の先生に『K、今日来てないけど知らない?』って聞かれたんだよ」
「おい、マジかよ。あいつ、そうとう追い詰められているんだな…」
高まった緊張をほぐすには充分な話題であった。またしても、聞きたくないのにKの悪い噂を聞かされることとなった。悪い噂話をしている自覚があるのか、声は潜めているようだが、聞きたくないことほどよく聞こえてしまうのは何でだろうか? それは学校だけではなく塾でも同じであった。
中には「Kが学校に来なくなったのは川口と駆け落ちしたからだ」とか「Kの一家はもう、もぬけの殻だ」とか、どうしたらそのようなことが言い切れるのか…。根拠のまったくないデマが飛び交う始末であった。
そんなことが耳に入ってくるたびに悲しくなった。もし許されるなら、そんなつまらぬことを口にした奴ら全員ひっぱり叩いた上で、もう二度としゃべれないように舌を引き抜いてやりたい、そんな気持ちであった。




