第3章-幕間(マガツキside/緋霊side)
巫級代報者試験が終わり、深夜。祟界にあるマガツキの執務室では、綴理が巻物を広げて学園襲撃の結果報告をしていた。
「大神学園内部に荒級祟魔百体、準烈級祟魔十体、烈級祟魔三体が侵入しましたが、標的の殺害は達成されず、三重結界に施したもう一つの歪みも消去されたものと思われます」
「そうかい」
綴理の報告を受け、机に頬杖をついていたマガツキはマーカーペンを指で回しながら、どこか退屈そうに応じる。
巻物を閉じた綴理は、顔を上げて深緑の短髪に紫眼の若い男の容姿を保っているマガツキへ視線を向けた。
「えらく平然としていますね。もしかしてこうなることまで読んでいらっしゃったのですか?」
「君ほどじゃないけどそれなりにはね。まぁ低級祟魔ごときに標的が殺せたらここまで来るのに三年もかかってないし、上級祟魔はいらないよ」
「それもそうですね」
微笑みながら話すマガツキに綴理は小さく頷いた。そしてマガツキは持っていたペンを机に置き、口を開く。
「低級・中級祟魔に関しては強化を怠らないように各陵主たちに通達。今後、標的殺害の任務は狗ノ間に任せて、僕らはしばらくの間、彼らの動向を見守るとしよう」
「かしこまりました」
綴理が一礼して引き下がろうとすると、マガツキに呼び止められる。
「はいこれ。あんまり根詰めすぎると身体によくないよ」
マガツキから十三個の菓子が入った箱を差し出される。
「一体、誰のせいだと……。いえ、有難く頂戴します」
綴理はマガツキへ聞こえない程度にボヤくが、箱に記された文字を見て大人しく菓子箱を受け取る。綴理は手にした菓子箱を眺めて微かに口元を緩めた後、頭を下げて退出していった。
「では、期待しているよ。狗ノ間の諸君」
マガツキは、水晶玉に映った緋霊が狗無の執務室へ入っていくのを見て呟いた。
◇◆◇◆
ところ変わって、狗無の執務室。召集された緋霊、翠霊、蒼霊の三人に向けて狗無が喋り出す。
「学園襲撃が失敗に終わり、正式に我ら狗ノ間に北桜秋葉殺害の任が下された」
「成功すれば等級昇格はまず間違いないが、うちの烈級の中でも力のあった三体が揃って倒された以上、気は抜けん」
「ほうじゃな」
蒼霊の話に緋霊は神妙な面持ちを浮かべながら返した。と、狗無はどこか張りつめた様子の緋霊を見やる。
「緋霊よ、準備は整っておるな?」
「勿論です。必ずやこのわしがあの娘の命を奪うてみせましょう」
狗無の問いかけに気を取り直したのか、緋霊は威勢のある声で言った。
「くれぐれも抜かるでないぞ」
「分かっちゅう。じゃあのう」
扇を開いた翠霊が自らを扇ぎつつ念を押すと、煩わしそうな口調で返した緋霊は、軽く手を振って部屋を後にするのだった。
これにて第3章完結です!
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