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天界の代報者~神に仕えし者たちの怪奇譚~  作者: 桜月零歌
第3章 巫級代報者試験編
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第3章-第13社 結界術

 週が空け、巫級代報者試験まで残り一週間。五限目の演習授業は祓力を用いた結界術(けっかいじゅつ)だった。


 出張中の織部に代わって、結界の祓式を持ち、実際の現場で結界師の両親の補佐もしている樹が先生を務めることとなった。樹は前に出ると、秋葉たち一年A組の生徒に向けて説明し出す。


「結界術(けっかいじゅつ)は大きく二種類あって、内に働きかけるものと外に働きかけるものとに分かれる。神社やそれこそ大神学園に貼られてる結界なんかはその二種類が併合したものが多いな」


 試しに学園の結界を視てみると、空間を浄化する作用の他に祟魔が外から侵入するのを防ぐ効果や学園内に祟魔がいないか感知する効果などが付与されていた。


「結界は祓力を基にしてるだけあって浄化作用がついているが、他の効力も付与することができる。任務の際に主に使用される効力は、防御、防音、感知、内縛(ないばく)、入縛(にゅうばく)、認識阻害(にんしきそがい)の六つだ。特に認識阻害(にんしきそがい)と入縛(にゅうばく)は祟魔との戦闘時、一般人を巻き込むのを防ぐのに欠かせないものになるから今日のうちに習得してもらうぞ」


 内縛(ないばく)とは結界内にいる者が外に出ないようにする効果で、その反対の入縛(にゅうばく)は結界に入る者を縛る効果がある。


 また、認識阻害(にんしきそがい)はその名の通り、認識を阻害させることによって結界内部の状況を外の者が知るのを防ぐ効果があり、極力人目についてはならない代報者にとっては街中で任務を遂行する際には必須級の効力となるのだ。

 

 結界術(けっかいじゅつ)の基本となる説明が終わったところで、樹がお手本を見せることに。樹は地面に描かれた陣の中に仮想の拙級(せっきゅう)祟魔(すいま)を召喚すると、その場で素早く印を組んで拍手した。


 直後、拙級(せっきゅう)祟魔(すいま)の周囲に半球型の透明な壁が出現し、中の祟魔が纏っていた祟気が弱まる。樹が再度手を叩くと、結界が消えた。


「基本、結界は今やったように印を組むことで完成する。生成の際には集中力と精神力、イメージする力、そして器用さが重要になってくるからそれを意識してやってみてくれ」


 というわけで、いざ実践開始。各自陣の中に無害の拙級祟魔を喚び出し、印を組んで結界を構築していく。


 祟魔を取り囲むようにして結界を生成し終えた秋葉が一息ついていると、傍を通りかかった樹から合格を貰った。


「えっ、三人とももうできたの?」

「ちょっと早くない?」


 少し離れたところで結界の構築に励んでいた悠と薫に訊かれ、辺りを見てみると、秋葉と同じく熾蓮と白澪も樹から合格を貰っていた。


「まぁ、普段から神社の結界張り換えたりしてるからね」

「俺は忍びの修行の過程で習ってたからな。これぐらいの規模やったら簡単にできるで」

「私の場合は治療師(ちりょうし)としてやっていくときに必須だったからそれでね」


 どうやら重篤な患者をその場で治す際には、祟気が入り込まないよう必ず結界を張ってからでないといけないらしい。各々習ってきた過程に違いがあるのだなと秋葉が感心していると、話を聞いていた薫が熾蓮へと目を向けた。


「てか、熾蓮が忍びってどういうこと⁉」

「おい、それは聞いてないぞ」


 薫に続いて会話を耳にしていた樹も声を荒げる。


「あれ? 言うてへんかったっけ?」

「言ってないも何も初耳よ!」


 きょとんと首を傾げる熾蓮へ白澪がツッコむ。秋葉と悠は既に知っていたため何とも思わなかったが、薫、樹、白澪の三人は知らなかったようだ。


 熾蓮が改めて三人に説明すると、だからあんなに身体能力が高く、悠に教えられるほど暗器の扱いに長けていたのだと納得する。


「けど、三人とも凄いなぁ。あたしなんてまだまともに生成すらできてないってのに」

「そうそう。どうにも上手くいかないんだよね……」

 

 お手上げ状態の悠と薫が再び結界を生成するも、ヒビが入って割れてしまった。


「祓力の出力量は十分だし、印の組み方も合ってるから後は結界全体の密度かな?」


 一連の流れを霊眼で見ていた秋葉が樹に問いかける。


「あぁ。後は結界にムラがあると干渉する際にそこから崩れやすくなるからできるだけ無くすようにすることだな」


 樹はそう言って自分の傍にムラがあちこちにできた長方形の結界を生成し、そこへ手を当てる。


「ムラが多いと……こうなる」


 樹が厚みの薄い部分へ強力な祓力を流した瞬間、維持されていた結界が一気に割れて崩壊した。その光景に説明を受けていた秋葉や悠、薫は勿論、傍にいた熾蓮と白澪も唖然とした表情を浮かべた。


「だが、最初の内は上手くやろうとか余計なことを考えずに結界へ一点集中したらできるはずだ」


 結界生成には、樹も言っていたように並々ならぬ集中力と精神力が必要だ。頭の中にある雑念を払わないと、清浄な結界はまず構築できない。


 樹のアドバイスを受けた二人は息を吐いて肩の力を抜いてから印を組む。すると、祟魔を囲うように結界が現れた。今度はヒビが入るようなことはなく、きちんと形を保っている。


「どう? 樹」

「まだ二人ともムラが多いが、そこはやってくうちに何とかなるだろう」


 結界は一箇所でもほころびが生じれば、そこから邪気が中に入ったり、祟魔に侵入される恐れがあるので、ムラなく均等に祓力を纏わせる必要がある。


 秋葉も祖母から教えられた当初は、できなかったがやっていくうちにできるようになったので、彼女たちもいずれは自然と結界を張れるようになるだろう。


「それじゃあ基本が出来たところで、次はそこに効力を追加するぞ。まずは認識阻害から」


 樹から言われた秋葉たちは、構築された結界に向けて再び印を組むのだった。

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