↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界の代報者~神に仕えし者たちの怪奇譚~  作者: 桜月零歌
第3章 巫級代報者試験編
29/77

第3章-第7社 『神世妖魔奇伝』

 巫級代報者試験に向けての稽古開始から五日が経ち、土曜日の夜。悠が千草(ちぐさ)神社での例祭参加で不在な中、秋葉は結奈(ゆうな)と舞衣(まい)の二人でビデオ通話を繋いでスマホゲームをプレイしていた。


 タイトルを『神世(しんせい)妖魔(ようま)奇伝(きでん)』。和風アクションRPGの本作は、神と人と妖(あやかし)が共存する世界・八島(やしま)を舞台に、調停官(ちょうていかん)となった主人公がキャラクターたちと契約を結び、世界の調和を乱す存在である敵を倒していく物語だ。


 秋葉は銃使いの霜華(そうか)、結奈は暗器使いの鋼錬(こうれん)、舞衣は刀使いの瑞波(みずは)をそれぞれ操作して敵を倒していく。


「そういえば専門の方も代報者試験あるんだよね? そっちは今どんな感じ?」


 寮室に一人の中、秋葉はパソコン画面に映る結奈と舞衣に問いかけた。


『少なくともこの一週間でかなりしごかれてるぜ』

『もう筋肉痛で足パンパン! 自分らはそっちよりも試験と初任務が早いから尚更キツいんだよ』

「うわあ……それは大変だね」


 結奈と舞衣の通う専門学校では、秋葉たちのような通常授業がない代わりに専門課程の授業と演習授業がある。


 巫級代報者試験に受かるための稽古は勿論、その傍らで授業課題として出される制作もこなさなければならず、多忙を極めているようだ。


『秋葉の方はどうなんだ? やっぱそっちもしごかれてるのか?』

「まあそうだね。後、私の場合、祓式が分かったのがつい最近だから祓式を扱えるようになるところからやってる」

『あ、そうなんだ。自分の場合は時間の加速と減速操作で、結奈の場合は織物生成と操作だけど、秋葉の祓式って何なの?』

「『創作キャラの憑依』だよ。その名の通り、自キャラを自分に憑依させることができるんだ」

 

 舞衣に訊かれ、秋葉は霜華の持つ二丁拳銃で残りの敵を殲滅しながら話す。


『何だそれっ⁉ 凄ぇなっ!』

『マジか! そんなのオタクの夢じゃん!』


 ふとパソコン画面に視線を移すと、操作を中断した結奈と舞衣が目を丸くして驚くのが見えた。当の秋葉でさえ授業中にエルから話を聞いた時には、興奮のあまり危うく叫びそうになったほどだ。二人が驚くのも無理はない。


『ちなみに誰を憑依させてるんだ?』

「あー、『朱守(しゅのもり)祓魔譚(ふつまたん)』の主人公の朱華(しゅか)なんだけど、なかなか反りが合わなくてね……。軽動術試験で揉めたり、剣術稽古の時にはこっちの意思に反して行動したりでもう踏んだり蹴ったりだよ」


 結奈からの問いに、秋葉は不満を漏らながら答えた。朱華のせいで軽動術試験では一歩間違えれば失格、剣術稽古の時も彼女が出しゃばったおかげで身体にダメージを負うことになった。


 その翌日以降の稽古でも朱華が秋葉の制止を物ともせずに表に出てきては行動を起こし、迷惑を被っていた。これでは秋葉が祓式を操るどころか、逆に朱華が秋葉を操っているようなもので、本末転倒である。


『まあ確かに朱華ってこれ以上ないぐらい強気だし、基本他人の言うこと聞かないからな』

『剣術と強者との戦いが趣味なだけあって作中でも超強いイカレ野郎だからね。味方につけて且つ朱華の能力を使いこなせればこれ以上ないくらいの戦力なるんじゃない?』

「んー、それはそうなんだけどね……」


 見た目と実用性で選択してしまい、秋葉は朱華の性格の悪さと我の強さを見落としていた。これならば他のキャラにしておけば良かったかもしれない。


 そう後悔しつつ、秋葉は次なる強化素材を求めて霜華(そうか)を前へと移動させる。結奈と舞衣が操作する鋼錬(こうれん)、瑞波(みずは)も素材を回収した後に続いて走り出した。


『でも、反りが合わないのって結構致命的だよな。いや、話聞いてる限りだと基本的に朱華が暴走してる感じか』

「言っちゃえばそうだね。このゲームの契約キャラみたい連携できるようになればいいいんだけどさ」


 結奈の言い分に頷いた秋葉は、スマホ画面のキャラたちに目を向ける。敵と遭遇した霜華(そうか)が中距離から二丁拳銃で氷弾を足に打ち込む。


 敵から悲鳴が上がる中、鋼練(こうれん)が更に短剣を投擲して追撃し、瑞波(みずは)が刀でトドメを刺した。憑依しながらの戦闘はこのゲームのように連携が重要になってくる。


 憑依度の調整も今後の課題であるため、尚更朱華と協力しながら祟魔を祓えることが一番良いのだが、今の秋葉と朱華は息を合わせる以前の問題だった。


「連携を取るにしても、まずは好感度上げからかな」

『まー、好感度っつっても上げ方って色々あるからね~。けど、神妖伝(しんようでん)でも他のゲームでも一緒に経験を積む・その人をよく知ることで好感度が上昇するから、秋葉と朱華の場合もそれと同じだと思うよ』

『確かに、アタシらだって最初はお互いのこと何も知らなかったけど、関わってくうちに今ではこうして通話しながらゲームして遊んでる仲にまでになってるわけだからな』


 二人の話に秋葉は納得する。今、秋葉たち三人が操作しているキャラは本作の主人公と契約交わした契約者で、今のように戦ったり、行動を共にしたり、キャラストーリーを進めたりすることで彼らの好感度を上げられる。


 だが、現実は必ずしもゲームのキャラや秋葉、結奈、舞衣の三人のように順当に仲が深まっていく訳では無い。問題はどうやって好感度もとい、仲を深めるかだ。


『あっちが秋葉に興味なくてもこっちから朱華に寄り添う、もしくは朱華をその気にさせることでちょっとは振り向いてくれるんじゃないか?』

『ツンデレキャラの攻略法かよ! まぁでもそれで言ったら、朱華のこと一番知ってるのは生みの親たる秋葉だから何とかできそうな気もするけどね~』

「その気にさせる、かぁ……」


 一通り戦闘が終わり、探索報酬を受け取った秋葉は視線を落として考え出す。


 朱華は基本的に自分の利益を優先して動く傾向にあり、それに反する者に対しては誰であれ容赦なく抗ってきた。彼女の気の強さは秋葉でさえ、手に負えないものだ。ならばそれを逆手に利用するのが手だろう。


(朱華をその気にさせる、つまり朱華の得になるように仕向けるには……)


 秋葉はそこまで考えたところで顔を上げる。


「二人ともありがとう。おかげでちょっと解決の糸口見えてきたかも」

『そりゃ良かった。なら、もうひと狩り行くとするか~』

『おー!』

 

 結奈の言葉に舞衣と揃って返事をした秋葉は、プレイボタンをタップするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。