第3章-第6社 武術稽古
軽動術試験が終わった後は、武術稽古。体術、槍術、弓術などがある中、剣術を選択した秋葉、熾蓮、樹の三人は稽古場となる剣術道場に来ていた。
悠が暗器、白澪が薙刀と各々一武器を選択している一方で樹は剣術の他に銃器を扱う射撃術も選択している。
「ところで先生はまだか?」
「流石に教えて貰う人がいないんじゃ話にならねぇが……」
熾蓮と朱華を身に宿した秋葉は不安げに周囲を見回す。時間になっても一向に担当の教員が来ないことに、三人を始めとした剣術選択組が疑問を抱いていると、道場の入口の扉が開いた。
「遅れてごめん。剣術の指導者なら、わたしだよ」
「げっ、薫……」
薫がそう言った途端、樹が顔を引き攣らせて声を漏らした。樹の態度に秋葉が眉を寄せていると、薫が寄ってきた。
「指導者が薫ってそらどういうことや?」
「実は手の空いてる先生がいないらしくってね。それで織部先生に頼まれて教えることになったんだ」
熾蓮が問いかけると、薫はみんなに向けて事情を説明する。剣術の他にも九種の武術稽古が今現在、同時並行で行われているのだ。指導者が足りなくなるのも当然だろう。
「なるほどね。でも、大丈夫なの?」
「実力的には問題ない。なんせ薫は中学の剣術全国大会で中一・中二で二位、中三の時には一位だったからな。けど、薫が先生ってことは……」
「なんか文句ある?」
秋葉の疑問に答えた樹が考え込むようにして呟けば、薫は眉を顰めて問う。
「いえ、何でもないです……」
彼女の圧に押されたのか、樹はすぐさま首を横に振って否定した。
「ほら、時間押してるからさっさと始めるよ! 一人一本木刀持って集合!」
「は、はい!」
普段の薫からは想像できないほど覇気のある声で言われ、全員背筋を伸ばして返事をする。薫の号令で始まった剣術稽古は正直言って地獄であった。
木刀の持ち方から基本となる構えと型を教わった後はひたすら打ち込み稽古で、できていないところは薫の指導を受けながら修正していく。これらすべてを僅か一時間でこなした秋葉たちが揃って同情の床に伏せていると、薫がやってきた。
「習うより慣れろって言うし、残りの時間で試合と行こっか。誰からやる?」
「じゃあオレから!」
「お、いいよ」
薫が訊いた瞬間、秋葉の口がひとりでに動いた。秋葉は動揺する。が、そんなことはお構いなしに薫は稽古場の中央に移動するよう促す。
『ちょっと朱華! 何勝手なこと言ってんの!』
『別に良いじゃねぇか。コイツ強いんだろ? なら、やり合う以外選択肢はねえ』
秋葉が青筋を浮かべて問い詰めるが、朱華はすっかりやる気満々なようで嬉々として返す。
そうして半強制的に始まった試合は、朱華が秋葉を乗っ取るようにして薫相手に容赦なく攻めていくも、朱華のやる気と技量に秋葉の身体がついていかず、結局敗北に終わった。
「イタタっ……。全く朱華ってば、こっちの身体のことも考えずにズカズカ攻めやがって……」
祓力で全身をカバーしていたとはいえ薫にコテンパンにされた秋葉は、試合終了早々に帰還していった朱華へ怒りをぶつける。
「ドンマイ、秋葉」
「初心者が薫相手に攻め込むだけ大したもんだ」
怒り心頭の秋葉に対して、試合を見守っていた熾蓮と樹は同情の色を見せるのだった。




