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第二話:いかれた妹

 黒色のださい死神みたいなローブを着たチビの女が不機嫌そうな顔で、部屋の入口に立っている。

 俺の妹のスカーレットだ。

 一応、魔法使い。


「おら、食事だよ」といきなりスカーレットが俺とダンカンにパンを投げつけてきた。

 パンが俺の顔面に当たった。

「イテテ、何するんだよ。おまけにパンが床に落ちたじゃないか」

「うるさい! 冒険者ならそんなことぐらいでうろたえるな!」

 スカーレットが大声で怒鳴った。


「急にパンを顔面に投げつけられたら誰だってうろたえるだろ」と俺が妹に文句を言うと、

「急にモンスターが襲ってきたときにもうろたえていたら、やはり冒険者としての気構えが足りないですねえ」とうまくパンを受け取ったダンカンの奴がまた嫌味を言ってきやがった。


 そんなダンカンに対して、

「お前もぶつぶつうるさいぞ! いつもさぼってばかりのくせに。この役立たず!」と怒鳴り散らすスカーレット。

 俺には嫌味を言うことができるダンカンも、この妹にはいつもビビッている。

 

 俺の妹は性格がおかしい。

 本当は白魔道士のヒーラーを目指すために魔法学校に入ったんだが、トラブルを起こして一時間で退学処分になった。

 どんなトラブルを起こしたかと言うと、どうやら同級生にブサイクと言われたのが原因らしい。正確には妹の方が相手からそう言われたと思い込んだだけのようだ。

 同級生を半殺しにして、即行で学校から追い出されてしまった。


 その後、妹は独学で魔法を学んだようだ。

 けっこう強い攻撃魔法を使える。

 一応、才能はあるんだな。


 但し、治癒とかその手の魔法はさっぱり出来ない。

 こいつにその才能があれば俺のケガした足首もすぐに治るんだがなあ。

 だいたいそんなに不器量ってわけじゃなく、まあ普通の顔だけどなあと兄の俺は思っているのだが。

 

 そんなことを考えていたら、

「おいボケ兄貴!」といきなりスカーレットが目を吊り上げてにらみつけてきた。

「な、なんだよ」と俺がキョドっていると、

「今、あたしのことを最低のブサイクって思っていたでしょ」とスカーレットが因縁をつけてきた。


「え、お前いつから人の心を読めるようになったんだよ。そんな魔法いつ覚えたんだ」

「そんな魔法使えないわよ! 魔法じゃなくて、あたしは人の表情で相手が何を考えているかだいたいわかるのよ。やっぱりブサイクって思ってたんじゃない、このクソ兄貴!」

 スカーレットが、持っていた魔法使い用の杖で俺の足の脛を思いっきりぶん殴った。


「ウギャ! 何すんだよ、俺は足をケガしてんだぞ!」

 激痛で俺はベッドの上をのたうち回る。

「知ってるわよ。だから左足にしたんじゃないの。ねんざしたのは右足首でしょ。ねんざが悪化しないことに感謝しろ!」


 ケガ人に暴力をふるうとは、こいつ本当に頭がおかしいんじゃないか。

 絶えずイライラしている。

 と思えば急に機嫌がよくなったり。

 なにやらいつもせわしなく動いている。


 しかし、残念ながら我がパーティーで妹の魔法が一番攻撃力が強いのも事実だ。

 追放するわけにはいかない。

 しょぼいパーティーがますますしょぼくなってしまう。


「別にお前のことをブサイクとは思ってねーよ」

「じゃあ、どう思ってんのよ」

「まあ、普通の顔だな」

「普通ってなんなのよ! 冒険者ってみんな格好いい外見じゃないの? なによ、このしょぼくれたパーティーの面々は! あたしはカッコいい冒険者と一緒に華麗な冒険をして、最後にはドラゴンとか倒して英雄になりたいの! こんなパーティーじゃどうしようもないわ」

「顔が美形でしかもスタイルもいい人なんて実際にはこの世にほとんどいないぞ。そんなの物語に出てくるだけだろ。だいたい外見が良くても冒険者として優秀とは限らないしな」

 

 むしろ外見とかを気にするよりそのおかしな性格を直せよと言いたくなったがますます妹がヒステリーを起こすと思ったんで、やめた。


 俺は左足の脛を擦りながらスカーレットに聞いた。 

「で、冒険者ギルドで仕事は取れたのか」

「取れるわけないでしょ。リーダーの兄貴がケガしてんだから、あたしがどんなに優れた魔法使いだってこんなアホなパーティーに仕事なんてくれないわよ」

「まあ、もともと評価が最低のパーティーですからね」とダンカンが不愛想な顔で横から口をはさんだ。


 すると、

「だから評価を低くしているのはあんたが全然役に立たないからでしょ!」とスカーレットが長椅子に寝転んでいるダンカンに近づいて、そのたるんだ腹を杖でボコボコと殴りつけた。

「痛い、痛い、スカーレットさん暴力はやめて下さいよ。だいたい、そんな感じでいつも冒険者ギルドで暴れているから仕事取れないんですよ、見ていて見苦しいですよ」

「見苦しいって、人のことブサイクって言ったわね! 殺してやる、この木偶の棒!」

「ちょ、ちょっとやめろ、スカーレット」と俺はあわてて止めに入った。

 こんないさかいはしょっちゅうだ。


 このいかれた妹と俺とダンカンの三人、これが俺がリーダーをつとめている冒険者パーティーの全メンバーだ。

 我ながらしょぼいパーティーと思う。

 金がないから二人用のこの部屋に三人で泊っている。

 ベッドが二台しかないので、部屋に置いてあった小さい机を隅っこに片付けて、そのかわり長椅子を中に運んでもらった。

 

 このパーティー、全然まとまりがない。

 ったく、付き合いきれん。

 ああ、俺はもう嫌になったぞ。

 ちょっと一人になりたくなった。


「便所に行ってくる」

 そう言って、俺はベッドから立ち上がり、ケガした右足を引きずりつつ部屋の外に出た。

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