後編
「えっ!?えっ!?い、いいのかなっ?かなあっ?」
「ちょっと、ナニサマなのこの子」
「信じらんない、白樹クンの誘い断るなんて!」
「バカなんじゃないの!?」
即座に浴びせられたのは、いいのかな、というトモの戸惑いと、本心はともかくとした“お仲間達(笑)”からのブーイング。
けど、それに乗っかる様なヤワな精神してませんよ。こちとら精神年齢(ごにょごにょ)歳超えてるんだ。
「何と言われようと、自分は行く気無いよ。帰って弟たちとアニメ見るんだから」
そう言うと“お仲間女子”から蔑みの目でくすくす笑われたけど、気にしない。
だけどトモは、こっちが悪く扱われたのが分かったらしく、悲しそうな表情をした。
ホント、お人好し。……しゃーない。
「そっか、残念だな」
「また誘うから、今度は一緒に遊ぼうなっ!篠原は行くんだろ?」
「来ないなんて、絶対ありえない、でしょ!」
“お仲間”の男性陣は、にやにやとしてて完全に面白がってばかりだし、攻略対象2人はこの期に及んでも(少なくとも)トモは一緒に行くと信じて疑っていない様子。
なら、私は。
「で?結局トモはどうすんの?」
問いかけ、次いで畳み掛ける様に、
「そういえば、今日から『天球儀』で新しいラテが」
「行く!!」
よし。
あっさり引っ掛かった甘党のトモに内心ほくそ笑みながら、その背中に手を回す。
「そうこなくちゃ。……じゃ、いこっか」
ふふん、女性はこうやって『スマートにエスコート(笑)』するもんだよ。
トモを促し、退出しようとして……。
「もー!最近いっつもそうだよね!ねえ、櫻ちゃんはぁ、どうしてそんなに邪魔ばっかすんのさ?!」
東雲君がキレた。
かと思うと、何事か考えていたそぶりの白樹君が、
「ああ、もしかして今までのって、それ、俺達の気を引いてるつもりだった?ゴメンね、気付かなかったよ」
……って、すっごいお愛想な笑みで。
・・・・・・・・・。
は?
ぽかん。
一気に女子連中から殺気が溢れて、トモと一般男性陣が少し下がったけど、私はそれどころじゃなかった。
言葉が脳に浸透したタイミングで――――――爆笑。
「ブフォッ……ないわー!!(笑)あーはははははははははは!!!ナイナイ!これは無いわーーーwwwあーっはっはっはっはっは!!!」
お腹抱えてげらげらと笑い転げる私に、本気で“その線”が無い事に気付いたらしい『彼ら』が顔色を変えたのが分かった。けど、もう、自分それどころじゃないんで!(爆笑)
ってゆーか、どうしてそういう結論に達した!(爆笑)
「さっ、櫻ちゃんっ!?」
トモがたしたしとヒトの二の腕タップして来るけど、ゴメンこれは止まらんわwww
爆笑を続けながら、様々な表情を浮かべたままこちらを見ている“彼ら”に視線を合わせると、ふと、思い当たる事があった。
「ああそっかあ、分かった!ハーレムで調子こいちゃって、自分リア充だとでも思ってんのか!要するに、(厨2)拗らせちゃったんだな!……ブッはーはははははっ!!!」(爆笑)
ぐぬぐぬと顔を真っ赤にしてる攻略対象君達。あ、男性陣も肩震わせて俯いてるの多数。
もしや思ってたけど言わなかった的な?ダメだよー、そこは言わなくちゃー(笑)友達でしょー(笑)注意しないからこんな(厨2病)拗らせちゃってるんじゃんー(笑)
女子は青ざめたり真っ赤になったりと色々で……まあ、青ざめてるのはまだ救い様があるかな?なーんて、偉そうな事は言えないけど。
「無いわー。あー、もう夢は見ない」
おっけ、分かった。十分に理解したともさ。
『ゲームの彼ら』は、この世界には“もう”存在しない、って事がな。
……にしても、ハーレムエンドの末路ヒデェwwwバロッシュwwwwww
「そんな事言ってるけどさあ、“どうせ”“キミも”俺達みたいなヤツが好きなんだろ?」
笑いが止まらん私に、奴らさらに畳み掛けて来おった。
おやぁ、ブラック降臨しちゃって良いんですかいのぅ?白樹君(悪鬼の如くな笑み)
そんなに自分に自信があるのか、バカにされてると思っているのか、このままじゃ済まさないって事なのか。
だが、それはお門違いというものだよ、少年。
「悪いけどホントに無いんだゴメンねー(嘲笑)確かに私は自他共に認める『美少年マニア』だけど、基本的に見る専なんだよ。ちなみに恋愛対象は、包容力があってスマートにエスコートできる20以上の社会人限定ね。今だと……そうだなあ、2、5次だけど『闇の皇帝様』がお気に入りかな!イケメンで、颯爽としてて、闇の皇帝なのに光大好きとかちょっと変わってて。そこが面白いんだけど。大人なのに子供っぽいところがあって、ちょっと何考えてるのか分かんないようなミステリアスな部分もあって、目が離せない、っていうのかな」
「あの、でも櫻ちゃん、この前まで『ゲームセンターのお兄さん』押しだったよね?あの人、大学生って聞いたけど……」
そっちは良いの?と、横から遠慮がちな合いの手が。
ぎゃあ!良くはありませんとも!
「『ゲーセンのおにーさん』はまた別枠!あっちは完全3次元で、今一生懸命攻略中なんだから!余計な事言わないでよ!」
ライバル増えたらどうすんだ!
まあ、本気で怒った訳じゃないけどさ。
実はこの『ゲーセンのお兄さん』も、攻略じゃないけど登場キャラではあるんだよねー……。落とせないバグが現実化した時、どうなるか非常に気になります!!(鼻息)
「あー、あの人は普段からやる気無いけど、あのだるだるしいトコがむしろ良いんだよ~。はあ~、私の目の前で本気見せてくれないかなあ……てか早く見せろオオオオオォォォォ!!!ギャップ萌え最ッ高オオオォォォ!!」
当人を思い出して、はにゃ~んとうっとりとした後くわあああってなって、目の前の状況にはたと自分を取り戻す。
「と、言う訳で、生憎と自分の事で手いっぱいな同年代と年下は好みじゃないのよ。それに自分、婚約者いるし。嘘だと思うなら確認とってみれば?」
じゃあねん、と手をひらひらさせて、今度こそ退出。
攻略対象君達が、その時どんな顔してたのか、私は知らない。知る気も無いけど。
そのままトモの背を押して廊下に出たら、そこへちょうど空条先輩他、3名様が待ち構えていた。
このタイミングだと……当然今の出来事を観戦済み、という事なんだろうなー……。
「……ふん、近頃友美の様子がおかしいと思っていたが、原因はやはりお前か?……だが、中々に面白い。……そうだな、お前も俺の主宰するティーパーティーに入れてやるとしよう。光栄に思えよ?友美、お前も中の良い同性の友人がいれば、今までの様に気兼ねする必要も無くなるだろう?俺は分かっていたぞ。最近遠慮ばかりしていたのは、男の中に女1人という状況だったからだろう?今後はその様な事は無いからな、お前は安心して甘えていれば良い」
「そうだよ。キミもね、央川さん、だっけ?女の子は皆甘いお菓子が大好きでしょう?歓迎するからいっぱい食べていってね」
「無理する必要はない。言いたい事があれば、俺達は何でも聞く」
ひゅ~♪
甘~~~~~~い!!!
すげー!さすがハーレムエンド!!
だがしかぁし!!
「すみません、先輩方。それ無理です」
「何っ!?」
「え!?」
「……!!」
「さ、櫻ちゃん!?」
トモも込みの全員に驚かれた。
でも、私は自分の意見を翻すつもりは一切無い。
「私、これから予備校に通う予定なんです。来年受験だし。それで、予定の曜日が火曜と金曜なんですよね。予備校だけじゃなくて、資格試験の予定も組まなきゃなんで、正直クラブ入るつもりないですから。それと私“そんなん”で時間潰れるくらいなら、今仲の良い友人達と親睦を深める方が大事だと思ってるんで」
予備校の話は本当だし、調べれば嘘じゃない事はすぐに分かるはず。
……例会の日に合わせて日程組んだのはワザとだけど。
トモを構ってれば、いつかはそんな日もあるかもしれないな~、という保険じみた決め方だったけど、まさか本当にそういう話が来るとはね。
「なん、だと……?」
空条先輩絶句してる。おお、レアですな。
「しっかりしてるねえ」
「……ああ、そうだな」
逆に観月先輩は……褒めてくれた、って受け取りで良いのかな?
同意した椿先輩も。
「それじゃ、失礼します」
「あっ、櫻ちゃん!?先輩たち、さようなら!!……待ってよ、櫻ちゃん!」
茫然としたままの空条先輩と、付き添う友人先輩達を置いて、私はトモと一緒に昇降口を目指す。
「もうっ、櫻ちゃんたら!さっきの態度、あんまり良くないと思うよ!」
「あれはあれで良いの。トモだって、あの流れのまま私までお茶会に参加したら、あの連中が何をどうしでかすか、想像出来ない訳じゃないでしょ?」
「……それは……。でもね、少なくても“あの連中”って言い方だけは、絶対ダメ」
「はいはい」
「もうっ」
少しやりすぎたかな?
でも、トモだって完全に否定した訳じゃない。って事は、事実だって認めてる部分もある、って事で。
3先輩はともかく、同学年のあの患者2人が、なあ……。
だから、あの場はあれでよかったんだよ、きっと。
こっちは『逆ハー』ぶっ壊そうとしているんだからさ。
「あ、そうだ、せっかく『天球儀』寄るんだし」
愛用の新型試作ケイタイを取り出す。そうそうこれ、そろそろ本格的に情報公開するんだって。
パパは少し不安そうだったけど……きっと大丈夫。売れるよ、だって『スマホ』だもん。
「皆も呼んで一緒にお茶しようか」
「あっ、それいいかも!」
さっきまで困った顔してたトモの顔が、一気にぱあっと明るくなる。
「まずはりっちゃんに電話して、と」
「あっ、じゃあわたし、『あーやさん』と『よっしー』に連絡するね!」
「いいの?」
主に電話代的な意味で。
「いいの!」
うきうきしながら電話掛け始めたし、なら、まあいいか。
「……じゃ、そういう訳で、作戦会議、しますか」
何の、って、決まってるじゃない。
『トモと“本命”くっつけちゃおう大作戦』の、さ。
その後、無事りっちゃんと渡りを付けた私は、もう1か所だけ連絡を入れた。
それは―――
「あ、もしもし?『天上』さん?もう『お迎え』来ちゃってます?あ、そうですか、いつもすみません。あのですね、今日はこれから友達と飲みに―――いえいえまさか、酒じゃないですよー、コーヒーですって。……そうです、ええ、いつもの『天球儀』で。……はい、例のあのメンバーと一緒です」
話に夢中だった自分は気付かない。
「……ふっ、この俺の誘いを断るとは。……友美は友美で、遠慮しつつも満更ではなさそうだったが……“アレ”は完全に意に介さなかったな。……おもしろい」
「確かに。あそこまで脈が無さそうな子も、珍しいよね」
「……なびく様子が想像出来ん」
先輩方が私の事をどう評価していたか、とか。
「……僕、これからちゃんと勉強しよう」
「……」
「「…………」」
先輩方の話を聞くともなしに聞いていたらしい同級生達が、厨とか2とかの患者予備軍くらいまで、何とか立ち直ってたりしていた事を。
「で?話は分かったけど、具体的にはどうすんのよ」
喫茶店『天球儀』は、寡黙な渋いマスターがいる、ちょっと独特な雰囲気の喫茶店。
実は『隠し』の『天上岬』の活動拠点だったりするんだけど……それはいったん置いといて。
りっちゃんのセリフに、私は少し考えてから意見を出してみる。
「『友人コマンド』を使うっていうのは、どうかと思うんだ」
「「おおーっ!!」なるほど」
そのテのゲームの経験が全く無いトモ以外から、驚きと賛同の声が上がる。
「えっと?」
本人が意味分かって無さそうなので、簡単に解説。
「つまり、勉強や遊びを皆で一緒にやろうよ、って事」
勿論それは、自分の為にも少しはなるだろうけど、根っこはあくまでトモの為、だ。
「友人コマンド発動しまくって、まずはパラメ上げから!お気使い精神も上がって一石二鳥な感じで!」
「おおーっ!」
「ねえ、それはいいけど……例えば誰が何の担当になるの?」
「なら、わたしだったら……体育、とか?」
具体的な振り分けの段になった時、真っ先に手を挙げたのは、バド部に入ってる『よっしー』
「良いんじゃない?『運動』と『気配り』担当って事で」
言わずもがな、パラメーターの話をしてますが、あくまで架空のものです。
……って言いたいところだけど……これがうっかり現実(元ゲーム準拠)だったりするから……。
「それならワタシは『勉強』と……『精神』、かな?」
何か怖い話聞いた気がした。
いやいや、レベル上げて『精神コマンド』鍛えるとか、最早それ別ゲーだから!
……『あーやさん』は、しっかりした根拠に裏打ちされた理論での一発逆転が大好きな、ある意味博徒だ。
ついでに言うと、人格矯正ネタが大好物という……いやいや恐ろしい ((((;゜Д゜))))gkgkblbl
「な、ならあたしは『情報』と『魅力』か」
視線逸らした『りっちゃん』が、最後のパラメを請け負ってくれた。
人も獣も無機物も時には概念すらも、いとも簡単に(縦横に)超越する『貴腐神』りっちゃんが、何故『魅力』を兼任するのかっていうと、りっちゃんの持論が「ヲタといえども、いやヲタだからこそ、外見には常に気を使え」というものだからだ。
外見が良いと、人はその人がヲタ趣味だとは思わないんだって。
だから余計な事言われなくて済んだり、偏見の目で見られたりする事が少ない、って。
アニメが変な評価のされ方しつつある海外だとまた事情も変わって来るけど、今の日本だとそんな感じかもねー。
「って、しまった私の担当、何処」
しまった出遅れた!?
「あのっ、櫻ちゃん、誰が何の担当とか、そういうのいいよっ!気持ちは嬉しいけど……それよりわたしは、みんなと一緒に勉強したり遊んだりしたいな」
そんな風に、トモがはにかんで嬉しそうに言うから……。
「イイワァ」
「何という癒し」
「トモタソ蕩れ~」
残念語が周囲から漂った。
「皆で一緒に、か。何か同好会でもするとか?」
「いいねえ、お茶会に対抗して?」
こいつらヤバいお!完全に笑っているけど内容聞いてると笑えないお!案外本気なんだお!
「でも、じゃあ……いっそ生徒会牛耳っちゃう、とか?」
「「「それだ!!」」」
自分で言っといて何だが、案が良い手かもしれん。
皆で一緒にいられて、尚且つ余計な横槍が入りにくくなる……。
女子だけの生徒会は、男女の意見を広く取り入れるという意味で共学ではありえないから……これなら……。
「いける、かも」
それから私達は、トモの立場とトモ含め自分達の“友達としての行動”に(主に攻略対象達に)有無を言わせない為、生徒会を掌握する作戦に打って出る。
目標は2学期の総選挙。
(マイノリティなヲタである)自分達だけで遊びの延長みたいに権力掌握する、などと言われない様、表で裏で、色々と画策し、走り回った。
会長は何と私。……ハイ、言いだしっぺの法則です、ハイ。
予備校との二足のわらじはキツかったが、「内申!!内申!!」を合言葉に頑張りましたとも!!ええ!!(血涙)
ちなみに副会長はりっちゃんで、その補佐がトモ。会計があーやさんで、書記はよっしー。
そして、唯一の男子メンバーとして抜擢したのは、何とあのお茶会メンバーからの刺客?な、木森浩太君。ちなみに監査役です。
普段から大人しい木森君なら、一般男子からも元祖ティーパーティーメンバーからも文句言われまいて。くひひ。
まさかの木森君ハーレムだけど、実際にはだーれも興味持たなかったんだよねー。……たった1人以外は、さ。
それが誰か、っていうのは……、まあ、この会の発足した理由と、構成人員見たら一発で分かると思う。
それから、忘れちゃいけないのが……背後に付いて後押ししてもらいたい、と、こちらから頭を下げてまでお願いした――――――空条明日葉先輩の存在。
いくら自分達だけで盛り上がったとしても、知名度がなければ立ち行かない。
それに明確に売り買いした覚えはないけど、トモを巡っては、お茶会メンバーと微妙な空気になってしまっているから。
特に、同学年の例のあの人たちが出て来てしまった場合、あるいは後輩だという東条君が食い込んできた場合、この計画は意味がなくなってしまう。
だから私達は、全員揃って―――トモまで混ざって―――というか「まず真っ先にわたしが行かなきゃ、でしょ!?」と妙なタイミングで熱い修造精神を発揮した揚句率先して―――頭を下げに行ったのだ。
結果からいえば、この計画は非常に上手く行ったと言えるだろう。
季節イベントを生徒会での仕事としていくつかこなしていく内、気付けば常にほんわかした空気が生徒会室に漂う様になり、散々双方後押ししまくった挙句、3年の卒業時にはついに、屋上の温室庭園―――つまりあの、ゲームの個人ルートLLED最大の見せ場である告白の場で、まさに3年越しの『木森浩太トゥルーED』を迎える事となったのだ。
だから、その事はもう良いのだ。
私はトモという掛け替えの無い友人を手に入れ、さらにはりっちゃんやあーやさん、よっしーという得難い仲間達と共に皆で強い絆で結ばれたと、そう確信出来たのだから。
だから、そう、それは良い。
問題は……私達が卒業後、それぞれの進路に向って歩み出した後の事。
それまでたまーに、ごくまれーに、生徒会室に顔を出してたりもした、OBとなったばかりの筈の明日葉先輩は、因果というか、普通に考えて当然の様な気もするけど、私が進学先に選んだ赤い門の先で仁王立ちして待っておられて……。
【悲報】まさかのSHITAPPA生活の始まりとか、聞いてないし!!
後々、空条主催のクリスマスパーティーに招待されて先輩方や元患者の同級生に微妙な顔されたり、あまつさえそこで『隠しの天上岬』が私の護衛の為だけに偽の婚約者演じてくれていた(あくまで仕事として、です)事がバレ、そこで何故かキレた先輩が、トゥルールートイベントでおなじみの(ニセ)婚約者騒ぎの渦中にかなり強引に叩き込んでくれたり、さらにはそれが元で誘拐騒ぎに巻き込まれかけた挙句、気が付けばお互いの家の両親まで出て来る騒ぎになりーの、そうなれば当然一緒に会食するハメになりーの(父の胃がマッハでした)最終的には逃げ場が無くなりーので――――――いつの間にか空条に就職という名のナニカになる事が決まってた、というのはここだけの話……にしたい。割と、全力で、出来れば今すぐにでも。
あのー、ところでですね。
結構長い事私、婚約者のフリしてましたけどね。これいつまで続ける気なんですか?
って、えっと……“フリ”、ですよね……?あくまで“フリ”、の筈で……。
「明日葉って……え、だって、あの、トモの事、ずっと好きだったんじゃなかったんですか!?」
「何時の話だ何時の」
呆れられた揚句、空条明日葉トゥルーEDのセリフを生聞きするハメになるのは……そんなに遠くない先の……いやむしろ、案外早い話、だったりするのかも、しれない。
おまけ(長いです)
生徒会立候補の為の作戦会議にて。
「重要なのは、やっぱり後ろ盾と演説だと思うんだよねー」
「分かる分かる。特に演説は重要だよねー。あれのインパクトがあるのとないので、カリスマ性の有無がはっきり明確に……」
力説する櫻に、似た様な趣味の律が同意を示す。
「やっぱりわたしたちらしく、どっか(主に参考場所は2次元)からそれっぽいの見つけて来るとか?」
「探せばあるっしょ、色々と。ネタものから引っ張って来るなら、知ってる人はニヤリとして、知らない人は「おおなんかかっこいい」とか思って貰える様なの探すとか」
「例えば……『諸君わたしは~』とか?」
からかい交じりな綾音の危険発言に、友美以外の全員が顔色を変えた。
「それダメあかんて!!」
「だめ?」
「知ってる人も知らない人も、みんなどっ引くから!!」
「と、とりあえず有名所からまず探してみよう!……片っ端からそれっぽいの集めてさ、後改変すれば良いんじゃない?」
「そ、そうしよう!」
「えっと、それなら手伝えそう、かな?」
こうして第53期生徒会選挙の演説は、見事にネタまみれになったそうな。
以下、現生徒会長央川櫻の演説より一部抜粋。
「皆にもう一度誇りを取り戻して欲しい!
“彩星学園”を愛する心を!
この“学園”は、“皆に愛される学園”に戻れるだろうか?
―――私は此処に誓う!
私を擁立して下さった前生徒会長をはじめ、全校生徒の皆に祝福される会長になると!」
以下、登場人物紹介
主人公:央川櫻
いつのまにやらヒーローポジ乗っ取ってた。
黙っていれば美少女?な、残念女子軍団の中心人物。
ヒロイン:篠原友美
ふんわり系美少女。こちらではトモと呼ばれている。
央川櫻との再会により本来の自分を取り戻し、さらに磨きまで掛けてゆく事に。
友人その1:二宮律子
通称りっちゃん。あるいはリンリン。櫻とは親友同士といえる。
学園内でも有名な『貴腐神』であり、「横にシンメトリカルドッキング」など、常人には不可解なセリフを吐く事も多い。
編入初日に自ら趣味バレした櫻に話しかけるも、直後にカップリングで揉めた。
殴り愛の末、最終的には深い友情で結ばれる事に。
櫻曰く「腐った趣味は乙女の嗜み」
友人その2:錦織綾音
通称あーやさん。何故一人だけさん付けなのかといえば、皆心底では彼女を恐れているからに他ならない。ハニかんだ時が一番恐ろしいとかもうね。
裏名が『あ(や)ねサン』……つまり姐さんである事は、決して本人には悟られてはいけない事実である。
友人その3:吉田瑠衣
通称よっしー。
友美以外の3人の中ではのんびり屋で温厚な方。
唯一の体育会系女子だが、その実体は、週刊少年漫画をこよなく愛する同じ穴の狸系少女である。
残念化した攻略対象達
空条明日葉:空気読めない俺様御曹司。
友美の事は、大切な後輩として見守り可愛がって甘やかして来た。
後輩男子は(笑)むしろ嘲笑の対象。
初見でなびかない櫻と出合い、その後の生徒会選挙の件を経て、友美→櫻に興味がチェンジ。
気が付けば手放せなくなっていたというオチ。
観月輝夜:おっとりちょっとおしつけがましい?
その後に辿った経緯はほぼ予定通りであり、大学進学後、空条の後援を受け海外に修業に行った。
自分の作ったお菓子を食べてくれて可愛く笑ってくれる友美は愛玩動物。
椿三十郎:性格はほぼ変わらないものの、やや周囲が見えなくなる悪癖が増えた。
その後、明日葉との絡みで櫻とも密接に関わる事となり、悪癖はなりをひそめたが、何故か上司である明日葉に一方的に恨みがましい目で見られた。
白樹去夜:積極的に友美を落としにかかるも、どこかゲーム感覚。
本性を出すイベントが無かった為、いまだに男女問わず広く浅くな付き合いをしている。
可愛い子を追っかけている自分はイケてるんじゃないかと思っており、内心では他者を小馬鹿にしている節がある。
逆ハーレムからの友美争奪戦を経て、自分が常に他人より優位に立っていると勘違いした厨2病患者もどきと化した。
作品終了後の彼は、可もなく不可もなくな、それなり小物男性。
東雲愉快:積極的に友美争奪戦に絡んだ人物その2。
作中友美を追い詰めた女子は彼の親衛隊であり、いじめられて苦しんだところで、後から助けの手を伸ばし、依存させようと画策していた。
誰とは言わないが、妹との繋がりのある櫻はともかく、彼の場合は全く縁が無くなってしまうと思う。
「このままでっかい逃げ切りですうううううううううう!!!」
「させないよーーーーーー!!!」
頑張って逃げ切れまーりゃん。
出合えれば、勉強し出した彼を見て、また印象も変わって来るとは思うのだが。
木森浩太:誰とは言わないが、自分本意な行動を取りがちな周囲に始終ハラハラしっぱなしで、友美には申し訳なく、止められない自分は不甲斐ないとさえ思っていた。
お茶会メンバー最後の良心にしてストッパー。
友美がお茶会から距離を置き始めたのを知り、自身の気持ちも諦めかけていた。
(それが例の2人のさらなる増長原因にもなった)
自分に自信が無いのでアピール自体は控えめだが、「大丈夫?」「ゴメンね」等、良く気遣った為、そこが友美の琴線に触れたらしい。
最後は周囲の包囲網、じゃなかった後押しのおかげで丸く収まる。
大寺林先生:普段は積極的に絡まないが、その分周囲の自滅狙いという、大人げなくエゲツナイ教師。
狙うは漁夫の利。隙を逃さず、すかさずアピールする姿はまさに『大人きたない』
モトカノとの復縁の件もあり、今すぐどうこうは出来ないが(それ以前に生徒と教師)卒業後がむしろ本番(だと思っていた)
番外キャラ
天上岬:央川の家がごたついた時期に雇われた、専属ボディーガード。婚約者(偽)
何処をどう調査しても、クリーンな割に不自然な業績の伸び方をした事しか分からなかった為か、口には出せない様な複数機関から疑われており、ボディーガード選考時には向こうの方から書類紛れ込ませ、選ばれる様画策していたという裏事情。
櫻が「あ、まさか」と理解したのは、当然ながらゲーム世界だと気付いた後だったが、事情が分かればこれほど心強い味方もいないという理由から、むしろそれならとばかりに進んで利用する方向にシフトチェンジ。
ちなみに相方さんも兄弟や親族の護衛に回っており、時折護身術の指南なども行っている。
当然すでに調査は行われており、彼女のメモや日記、発言などから、前世だのゲームだの含め概ね理解されている。プライバシー(笑)
『空条』と『天上』で『じょう』の音が被っている事から、何かしらの血縁があるんじゃないかという気がして来た(作者の中で)
喫茶店『天球儀』:元々は純喫茶だったが、櫻に見つかった結果、いつの間にやら近所の女子高生の溜まり場(笑)
無口なマスターは、口に出さないなりに、この可愛らしいおしゃべり雀達の事を可愛がっているらしく、最近甘いドリンクとおやつ(サブレ)が増えた(笑)
おしゃべり雀達も、いそいそとおやつ(サブレ)を用意してくれるマスターの事が大好き。
ゲーセンのおにーさん(コージさん):多分その恋(笑)は実らないお!!(落涙)
こちらは予定通り?大学でFDに出て来た連中とつるんでて、当然彼女もいます。
東条貴臣:このお話の場合だと既に入学しているので、きっとちゃっかり混ざってる。
友美に興味はさほど惹かれないが、明日葉が気に入った女性という事で、自分を印象付け、何かに利用できないかと企んでいた。
大学卒業後は空条に入社している。
櫻「ハァ!?営業!?無理に決まってんじゃないですか!ちょっと考えれば分かる事でしょう!?絶対向いてないですって!大体何で今更こんな時期に急に!?」
明日葉「決まっている、俺がいるからだ」
櫻「理由になってませんってば!!そもそも私は、最初っから情報統括部門希望って言ってあったでしょう!?そっち方面に進みたいからわざわざ資格取ったのに、それ生かせなかったら意味無くないですか!?」
明日葉「……あそこには、貴臣がいるだろう」
櫻「は?東条君がどうか?……良い子ですよね?」
明日葉「……」
仕事上だったとしても、仲良く話してるとことか見たくない。
櫻と貴臣君の気は、同僚としてなら多分合う。
白いもこもこした子犬を撫でながら。
櫻「人生は儘ならないね……。けれど……、この変遷こそ、私が生きた証なんだ……」
?「すぴ?」
ぴーすけ:この世界がゲームだと知ってから慌てて探しだした所、公園事務所で保護→保健所ルート寸前だった。白樹はイベント起してないので未発見。
両親や天上に、どうしてもと頼み込んで飼う事を承諾させた。
親としては不思議に思いつつも、普段我儘言わない彼女の個人的なお願いだったから、という理由での許可。
このお話では弟『進之助』に合わせ、『シロ』と名付けられている。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!