3、ピンクがピンクの理由
もう1話、本日更新予定です
ーー時は数ヶ月前に遡る。
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「我妻君、君がピンクをやりなさい」
「……え?」
みどりと共に面接の席で、ボスである紫子はそんなことを言った。
「聞いても良いですか?何故俺が……」
ちらりと隣に座るみどりを見遣る。みどりも不思議そうな顔をしている。そりゃそうだ。戦隊ヒーローのピンクといえば女性であるのが定番だ。
「そうね、理由は大きく2つ。まずひとつめはピンクは敵から狙われやすいから。中の人が女性というのは敵方さんにも周知の事実だからね。
「狙われ……」
桃矢の背筋がピンと伸びる。
「そう。フェミニストを気取る怪人もいるけど、宇宙人なんてのは下衆な輩が多い。そういう奴らにこそピンクは狙われる。直接的な暴力が無くとも人質にされたり、拐われやすい」
「……」
「スーツの性能で、身体能力は上げられる。力も並みの男以上に出るよ。でも中身が非力な女性だと分かっているとどうしてもね……」
はぁ、とため息をこぼす紫子。
みどりはそんな彼女に「ねえ叔母さん」と。
「紫子叔母さんも、そうだった?」
「ん?」
「たくさん狙われた?拐われそうになったの?」
みどりは心細そうに……いやこれは数少ない身内の事を心配しているのだろう。その問いに紫子は苦い顔を作る。当時のことを嫌でも思い出してしまう。
「狙われたし、拐われたわ。私はピンクじゃなかったけど、中身が女だっていうのはバレていたみたいね」
「よく無事だったね。……私そんなこと全然知らなかった」
みどりは悔しそうに、きゅうっと唇を噛む仕草を見せた。
紫子は笑う。
「あんたはまだ小さかったから当たり前でしょ」
「でも……」
「まあね、そりゃ現役の頃は大変だったけど、攫われたらすぐに仲間が助けてくれたし。奴も……」
「奴?」
「……何でもないわ」
頭上で何かを振り払う仕草をしたあと、紫子は2人に向き合い直した。視線は桃矢へ。
「さっきも言った通り、私はピンクじゃなかったけど狙われてきた。だから我妻君がピンク役を担うのは言い方は悪いけど撒き餌だよ。分かりやすい女役を作ることで、敵から本当の女への視線を逸らす為のね。時間の問題かもしれないけど」
桃矢は納得したように頷く。
「そういう理由なら構いません。こいつが狙われる位なら俺がピンクをやります」
「ちょっと待って!」
みどりは慌てて立ち上がる。
「それって私の分まで桃が危険になるってことでしょ?そんなの嫌だよ、私がピンクをやる。大丈夫だよ私強いから。ちょっとくらい……」
「聞き分けなさい、みどり」
「叔母さん……っ!」
紫子はティーカップを手に取り口をつける。紅茶は少し冷めてしまった。
「撒き餌が本当のエサになってどうすんの。あんた宇宙人に強姦されても良いの?」
「レ……!?」
みどりと桃矢は分かりやすい位動揺する。
「下衆な野郎が多いって言ったでしょ。我妻君なら少なくともそっちの心配はしなくて済む」
「あっちに余程おかしな趣味がなければ」という不穏な言葉が耳に届いた気がするが、桃矢はあえて聞こえなかったふりをした。
「あと、我妻君はピンク適任だと思うよ」
「え?」
「これが理由ふたつめってところかな」
みどりと桃矢の頭にクエスチョンマークが飛ぶ。
「このヒーロー名の通り、『ゴットネス☆ファイブ』はこの国に住まう神々の力を少し借りて戦う」
紫子は、まだ事情が飲み込めていない様子の桃矢を見て、ふっと微笑む。
「それぞれの色で司る神が違うのよね。……ピンクは愛を司る女神の加護がある」
「……っ!!」
桃矢はびくりと大きく肩を揺らす。
「ほらぁ〜、ね!一途で健気な君にぴったり!……だから女神も気に入って力を貸してくれると思うのよね」
「ゆゆゆゆかりこさん……気づいて…!?」
「みどりはまだ幼いところがあるから。そういうワケもあってあんたピンクは向いてないの」
「ほほほ」と口に手を当てわざとらしく笑う紫子に、みどりは首を傾げた。
「よく分かんないけどさ、じゃあ私がやる予定の色はどんな神様なの?」
「グリーンには大地の生命力を司る神の加護を。赤堀君……リーダーのレッドには正義を司る神の力があるわ」
紫子は手元の資料をぱらぱらとめくる。恐らく提出した過去の履歴書等を確認しているのだろう。
そしてその書類の束をバサっと机に放る。
「みどり」
まだ納得しきれていない……不満顔のみどりを横目で見ながら。
「我妻君を危険に晒したくないんだったら、あんたも強くなりなさい」
「叔母さん……」
「あとその鈍感なところもね。真白姉さんそっくりよ。ピンクやりたかったら惚れた腫れたをちょっとは経験してから言ってちょうだい」
みどりは「うっ……」と唸る。痛い所を突かれた。
「確かに桃はモテるけど……」
「モテるモテないの問題じゃないんだけどね?はい!もう話はこれでおしまい。ピンクは我妻君。グリーンはみどりで決まり」
パンパンと手を叩き紫子は2人をーー尚も口を尖らせてむっつりしているみどりと、それを宥めるように肩に手を置く桃矢を見て。
「みんな頑張ってね」
そう言ってにっこりと微笑んだのであった。




