16、女戦士のお約束
注意⚠️
1、本日2話目の更新です
2、今話以降、タイトルに『触手』がついている話は、通常話よりも下品ネタが多めです。下品ネタ・下ネタ等許せる方のみお読み下さい。
初陣だったあの晩から、幾夜か経った当夜。
——C 運動公園兼陸上競技場。19時03分。
「今晩は、『ゴットネス⭐︎ファイブ』の皆さん。今宵は良い侵略日和ですね」
「今晩は、エメ殿。最近仕掛けて来ないものだから、ついに『運命』とコトブキでも出来たのかと思っていたところだ」
レッドとエメはお互い軽口を飛ばし合い、「ははは」と笑い合う。お互い目は全然笑っていなさそうではあるが。
「残念ながら私の『運命』はにぶ……気まぐれな方のようでして。中々振り向いて貰えません」
至極さめざめとした様子で、わざとらしい演技がかった口調で語るエメ。
グリーンは、「今絶対、ニブイって言おうとしたでしょ……」と心の中でツッコむ。
——素顔知らないけど。スタイルは良いんだよねぇこの怪人。脚長いし。
多分イケメンっぽいのに、なかなか意中の人を落とせないらしいのは意外だ。
「この国を侵略するより、かの方に振り向いてもらう方がずっと難しいのではないかと。近頃はだんだんとそう思えてきましてね」
「そうなのか。我々としては貴殿にとっとと寿退社して頂きたいのだがなっ!」
レッドは豪快に笑う。あえて空気を読まないで、だ。
「ご冗談を。伴侶を得ることがあっても、それを機に退職するつもりはありませんよ」
「いやぁ、転職は是非ともオススメするがなぁ! まともな感性をお持ちの人類女性だったらば、侵略者の男にはまずもって惚れないだろうしなっ!」
「……」
レッドの痛烈な言を受けて、エメは笑顔のままぴしりと固まった。一瞬だが口元がひくついたのをヒーロー達全員が確認した。
——おぉ、これは図星? レッド流石だなぁ
グリーンは素直に感心した。
自分たちヒーローはそういえば、この怪人の『運命のお相手』について何も知らないのだ。
知り得ているのは。この国で出会った、という情報だけだ。
もしかしたら『人間』なのかもしれないし。正規の手続きを踏んで居住権を持ち、この国に住んでいる『人外』なのかもしれない。
レッドは今、そうと感じさせないように、嫌味のオブラートに包んでカマをかけたのだろう。……普通はオブラートに包む方が嫌味のはずではあるが。
エメは黙っていたので「言質」は取れていないが、先程の表情そのものが言葉よりも雄弁に語っていた。
普段飄々として冷静沈着な印象があるのだから尚更だ。
少々鈍いところがあると言われるグリーンでさえ、その表情が読めたのだから。
もしかしたら、その想い人に関してはそれだけ彼自身も余裕が無いのかもしれない。
——お相手は『人間の、女性』かぁ。
グリーンは気が遠くなる様な心地がした。
侵略者だし、慇懃無礼だし、急に噛んでくるし。おまけにちょっとSっ気もありそうだ。
——惚れられている女性に「全力で逃げて!」と言いたくなっちゃうなぁ。
そんな風に不躾な、グリーンからの値踏みするような視線が気に障ったのだろうか。エメと目が合う。
その目が、『後で覚えてろ』とでも言っているような気がして、グリーンは背筋がぞっとする感覚を覚えた。
「……今宵は少々、趣向を変えてみようかと思います」
そう言って、エメは胸元からそっと『何か』を取り出す。取り出したのは、手の平に収まるくらいの黒い物体。乾燥させたタコの足のような。
それを地面に突き刺すようにして置く。
後ろに控えていたアメは首を傾げながら、
「エメ様、そちらは……?」
「伯父貴がどこかの星から持ち帰った異星生物です。『使えるか』試して欲しいと言われていましてね」
キュポ、ジャボボ……と水だろうか?ペットボトルに入った何かの液体をソレに振りかけた。
「大丈夫。調教済みですから。さて……」
タコ足のような何かが、ビクンビクンと小刻みに動き出す。色は黒から濃赤色へ……。
体積がむくむくと。水を吸って膨らんで……?
「存分に遊んで差し上げてご覧なさい!ゴットネス⭐︎ファイブ!!」
その掛け声と共に、
『キィィアアアアアア!!!』
けたたましく響く甲高い鳴き声。
激しい地鳴りと共に、ソレは爆音を出しながら巨大化したのだ。
「「ひぃぎゃあぁぁぁ!!!」」
グリーンとピンクは悲鳴を上げながらすぐさまダッシュした。何というかもう初見で生理的に無理だった為だ。
ぬるぬるヌメヌメの巨大なタコのような触手。そのドス赤黒い触手が、大きくなっただけではなく、にゅるっにゅるに増えている。
ぬらぬらと妖しい粘液を滴らせている何本もの触手が、こちらに手を伸ばし追いかけてくるこの現実。できれば夢であれ!と2人は切に願うが。
「ななななにあれー!?気持ち悪いぃ〜!!」
「グリーン、振り返るんじゃありません!とにかく走りなさい!!」
「あ!でもレッドが捕まってるよ!?あれ見て!!」
視界の片隅には「いやぁ、少々煽り過ぎてしまったかなぁ。ハハハ」と笑うレッドがいた。
彼の片足には触手がぐるぐるに巻き付いている。プラーン……と逆さ吊りの状態だ。
ピンクはその光景を横目で捉え、「ちっ!」と短く舌打ちをする。
「レッドは良いのです。恐らくノーダメですわ。でも私達はワケが違います。もしアレに捕まったら最後……!」
「さ、最後……?」
ごくん、と唾を飲み込みながら、グリーンは並走するピンクの次の言葉を待つ。
「人間の尊厳が死ぬ!」
「わあぁぁん!やっぱりぃぃぃ〜!!」
——グリーンは半泣きで走り続けたのだった。




