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Free City  作者: 七賀ごふん
Rapid

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71/82

#11



いつもの緩いペースに乗り、導かれるまま駐車場へ向かった。大した確認もなく司の車に乗り込み、シートベルトを締める。発車する前、二人でしばらく手を繋いでいた。

「何か恋人みたいですねぇ……」

「あれ。もう恋人じゃなかったっけ」

「もう恋人でしたっけ」

互いに目を閉じて体温を確かめ合っている。


「はっきりした宣言がなかったから忘れてました。やっぱり俺達まだ恋人じゃありませんよ。俺が告白したら、司さんは保留って言ったんです」

「あ。思い出した」

「保留したことすら忘れてるなんて酷いです」

「ごめんね。怒った?」

「全っ然」


指が絡み合う。爪の丸みはいくらでも撫でていられた。

先に目を瞼を開けたのはどっちだろう。

ルームミラーに映る影が動いて、シートが軋む音がして。……唇を優しく塞がれた。

「ん……っ」

柔らかい舌が潜り込む。何もかもが懐かしい。

全てを委ねるのは未だに怖い。自分はまだ、彼の全てを知ってるわけじゃない。それでも離れられない、これこそがこの街の呪い。


彼にかけられた、暗黙の呪い。


車内を誰かに見られたら大変なことになるので、ほどほどにして離れた。本当はもっと触れたいし、触れてほしい。彼の熱が名残惜しくてたまらないけど、理性に冷水を浴びせた。

「クーラー入れるよ。家まで寝てていいから」

彼の長い指が手前にくる。そのうち、皺のひとつひとつまで覚えてしまいそうだ。……無理だろうに、そんなことを考える。

「司さん。俺、謝らなきゃいけないことがあるんです」

「何?」

「会社を辞めることになる……いや、自分から辞めようと思ってます」

昨日までに起きたことを全て話した。彼にはいつも事後報告となって申し訳ない気持ちになるが、真剣に聞いてくれるだけ有難い。きっと自分が彼にこんな話をされたら、いちいち大袈裟なリアクションをして口を挟むだろう。

これが大人、なんだろうか。


「そんなことがあったのか。なのに俺は何にも知らないで……」

「いや、俺が隠してたので。俺が司さんと交流があるって知られたら、迷惑をかけてしまうかもしれない。今じゃ何かのブラックリスト入りしてますよ」

「…………」


できるだけ軽い調子で返したものの、彼は苦しそうに表情を歪めている。

しまった。こんな顔させたくないのに。

ため息が出そうになったけど、その前に彼の深いため息が聞こえた。




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