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Free City  作者: 七賀ごふん
Rapid

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70/82

#10



予想したとおり、翌日は無事に帰宅許可が下りた。過労と精神的ストレスと診断され、しばらく休職するよう医師から告げられた。ちょうど会社からは自宅待機の指示が出てるし、こんなにタイミングの良いことはない。堂々と病院を出て、来た時と同じ格好でざっと景色を見渡した。


夏が近付いている。ジャケットは腕に持ち、シャツの袖を捲った。本当に暑い。このままだと今度は熱中症で倒れてしまいそうだ。


歩き出す前にもう一度建物を振り返る。藤が何号室に居るのか分からず、結局挨拶もしないで出てきてしまった。

……けど、これ以上無理に関わる必要はないかもしれない。

ほんのわずかな時間でも、確かに同じ感情を共有できた。それだけで充分、自分と彼は繋がった。

もうこの街に居ないかもしれない彼女達も。

出逢って、視線を交え、言葉を交えたのなら────既に切っても切れない縁が生まれてしまっているんだ。


その繋がりは、不自由なものばかりじゃない。きっといつかは誰かの為になる。出逢って良かったと、感謝する日がきっとくる。


「あつ……」


日差しが眩しくて、慌てて屋根の下へ入る。揺らめく陽炎はようやく消えた。病院前の駐車場を見回し、タクシー乗り場を探す。そのとき、不意に名前を呼ばれた。


「由貴君!」


軽やかな靴音。まさか、と思って振り向いた時には、もう声の主の肩しか見えなかった。

視界の端で散歩している人が疎らに見える。そんな公共の場で、強い力で抱き締められている。

数日ぶり……とは思えないくらい久しく感じる青年、司に。

「司さん、よくここが分かりましたね。あと、すっごい苦しいです」

「あっごめん。実は何度も電話したんだ。ようやく繋がったと思ったら、病院だって言うから。本当心臓に悪いよ……」

司はげんなりした顔で胸を撫で下ろしている。そんなやり取りも久しぶりな気がして、幾分癒された。


「俺、ちょっと出張してたからすぐに来てあげられなかったんだ。ごめん……今間に合ったのは奇跡に近い」

「あはは、嬉しいです。ありがとうございます」


二人で歩き出す。司について行ってるようなものだ。身長からして彼の方が歩幅が大きく、少し駆けるような形で隣に並ぶ。

「具合は? 大丈夫?」

「はい。また目眩や立ちくらみがしたら来いって言われました」

笑って答える。司はようやくホッとした様子で頷いた。




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