#7
「最近物騒ですよね」
「え? えぇ……」
青年はお茶を飲み、両手でぎゅっと握り締めた。その手はわずかに震えていた。
「多分、由貴さんの方が俺よりずっと正しく生きてますよ。俺は人として一番やっちゃいけないことをした。だから罰としてこんな身体になった」
ドクン、と心臓が大きく跳ねる。
罰、身体。そのワードに過剰反応してしまうのは何故だろう。いつから……あぁ、確か絹に出逢ってからだ。彼女も同じことを言っていた。全て罰なのだと。幸せになる為の代償、因果応報。好きな人と結ばれる為に、個々人の自由を手放さなければいけなかった。神様の家に入ったから。
この青年も同じなのか。
失敗しなかっただけ、廃人にならなかっただけ良い。……そんな風に声を掛けることはできない。最も最悪な結果を免れただけで、最悪な結果に変わりはない。
「あの……ごめんなさい、無理して答えなくて大丈夫なので。貴方の脚は……」
「あぁ。多分もう一生動かないんです。色々検査してもらったんだけど原因が分からないらしくて。でも、何となく理由は分かってるから」
きっと自分だったら心を引き裂かれるようなことだ。それを彼は笑って説明した。どうしてそんな風に笑えるのか全く理解できない。自分を気遣ってわざと明るく振る舞ってくれてるとしたら、その強さが理解できなかった。だからかもしれない。
「神様の家、ですか」
自分勝手な、相手の心情を考えない質問をしてしまった。
彼はわずかに目を見開いてみせたが、それ以上は動揺する素振りもなく遠くの窓を眺めた。
「分かってたんですね。そりゃそうか……神様の家も今は知らない人の方が少ない。でもネットが規制されたから、興味を持っても辿り着ける人はいなくなったでしょうね」
「そんなに解析が難しいんですか」
「えぇ、まぁ。それに好きな人の情報とか事細かに入力しなければいけませんし。自分だけじゃなく相手をよく知ってないと成功しません」
げ……個人情報?
司はそこまで自分のプロフィールを調べ上げていたのだろうか。接近する為に自分の方が彼の出身や経歴を調べてると思ったけど、実は彼の方が……。
青い顔をしてるのがバレて、青年は可笑しそうに笑いを堪えていた。
「ところでアレに興味が? 経験と親切心で言わせてもらうと、関わるのはやめた方が良いですよ」
「いや、多分もう関わっちゃったんです。俺の好きな人が」




