表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Free City  作者: 七賀ごふん
Rapid

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/82

#5



死ぬのが怖い。

小学生のとき、死について深く考える時期があった。いわゆる死の洗礼というやつだ。「何故生まれるのか」より「何故死ななきゃならないのか」、そればかり考えて夜も眠れなかった。


大切な人が死んでしまうことが怖い。父、母、妹が、死という漠然な力で葬られてしまうことが恐ろしかった。

自分が死ぬよりも身近な人が死んでしまう方が怖い。ひとりじゃ生きられない。大切な人が自分という人間を象る。支えられて、いや、ほとんど寄り掛かるようにして生きてるんだ。


死んでほしくない。

肉体だけじゃなく、心も。


以前自分が殺そうとした廃人も、きっと大切な人がいた。生まれた時は誰かに泣いて祝福された。

死んだら、誰かが泣いて悲しむ。

冷静に考えればわかること……それがどうも抜け落ちてしまったようだ。この街に来てから……司と出逢ってから、一切の良識がシャットダウンした。

前は嬉しかったら笑った。悲しかったら泣いたんだ。嘘じゃない。ひとりの、どこにでもいる人間だった。


幼稚な発想や甘えた思考、利己的な行動。悪意。それらを自覚したのはこの街に来てから。

本当の“俺”は……。


「あ……」


薄暗い照明がサイドに灯っている。見知らぬ病室のベッドで由貴は目を覚ました。

周りはカーテンで仕切られているが、一番窓際のベッドの為外の景色が窺える。眺めてもどこの病院に居るのか分からないが、とりあえず安堵した。

用意されてるスリッパを履き、部屋の外へ出る。とにかく時間を知りたくて時計を探した。ソファが並ぶロビーまで来て、ようやく大きな掛け時計が目に入った。時刻は二時。深夜で非常灯しか点いてない、静かな空間だった。


昼間に退勤して、家へ帰る前に気分が悪くなった。そして気を失ったことを思い出した。誰かが救急車を呼んでくれたんだろう。この時間までぐっすり眠らせてもらえたことも感謝しないと。

再び病室に戻ろうとすると、キィ、という床が擦れる音が背後で聞こえた。時間が時間なので、どきっとして振り返る。思ったよりずっとシルエットの位置が低い。見れば、車椅子に乗ったひとりの青年がいた。


「こんばんは」

「こっ……こんばんは」


いきなりそんな挨拶をされると思わず、オウム返しのように会釈した。青年は暗がりの中でも朗らかに笑っている。


「初めて見る方ですね」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ