#12
優しく頭を撫でられてる。
子どもに……いや、もっと昔に戻ったみたいだ。柔らかくて小さなベッドに乗せられ、母の子守唄を聴いている。
ある意味一番幸せだった時代。何をしても許されて、大事にされていた……あの綿雲のような日々を思い出している。
「由貴君?」
光が肌に突き刺さった。
眼前に広がるのは見覚えのある内装。ホテルのベッドに横たわり、司に頭を撫でられていた。由貴は寝惚けた頭のまま、天井に向かって手を伸ばす。
「疲れてたみたいだね。寝落ちしてたよ」
「落ち……」
一応シーツを被せられていた。服も着ていた為、安心して再び瞼を伏せる。
「夢を見てました」
「へえ。何の夢?」
「真っ暗な世界。でもたくさんの星が見えました。気付いたら司さんの家の庭にいて……でも司さんはどこにもいなくて、何故か知り合いの女性がいて」
「うんうん」
「……ここがFREE CITYだって、教えてくれました」
自分で言っておきながら笑ってしまった。きっと司も笑ってるだろうと思い、視線を向ける。
でも彼は笑ってなかった。
「司さん、どうかしました? あ……もしかして怒ってます? さっき俺が、神様の家のことで何か言ったから」
「んっ? ……ううん、それは全然。俺も気になってることだからね。でも確かに、神様の家はあまり関わってほしくないかな。何があるか分からない。危険だから」
それだけ言うと俯き、なにか考え込んでいる様子だった。
司の不思議なところが明確に見えてきた。
普段は何事もなく生活できているのに、突発的に不幸になりたいと願うこと。
そして、神様の家の話をすると具合が悪くなること。
だから極力、彼にその話題を持ち掛けることはやめにした。原因は気になるものの、彼が元気ならそれでいい。ただ笑っていてほしいだけなんだ。
でも、『縛られている』。綿の言葉がどうしても頭から離れなかった。人格が破壊された廃人と同じに、自分も縛られているんだろうか?
大切なパートナー、司に。……でもそれは彼も同じだ。自分も彼を縛っている。恋人とはそういうものだ。状況に応じて鎖にも絆にもなる、そんな不確かなもので繋がっている。
少なくとも自由ではない。誰も彼も、時間や行動を縛られている。縛られてないと思う者は、幸せ慣れしている者。時間は有限ということに気付いてない。
もちろん、司はそれに気付いている。カーテンから眩い朝陽が射し込んでも、暫く虚ろな瞳でこちらを見ていた。




