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Free City  作者: 七賀ごふん
Inside

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59/82

#11



「由貴君もその敷地から出ることができるよ。ただ他人の家には入れない。私の姉さんの家に入ろうとしても、入れないわ」

「え、絹の家がこの世界にあるの?」

「ええ。だから私もここにいる。姉さんのパートナーだから」

綿は寒そうに自身の腕を押さえた。彼女はノースリーブであまり着込んでない。上着を脱いで「使う?」と渡すと、彼女は笑いながらもそれを受け取った。

「寒くなんてないんだけどね。ここは頭の中の世界だから」

「頭の中? SFみたいだな……ところで絹はいないの?」

「姉さんは、呼べば来るかもしれないけど、基本は来れないかなぁ。貴方のパートナーも、他のカップルも。多分大体がそうよ」

何故?

気になったが、すぐに聞き返せなかった。間が空き過ぎて、今さら聞けなくなる。


どれくらいの時が経ったか分からない。ただ脈絡のない言葉を投げ合っていた。独りじゃないと分かって不安も薄れたからだろう。段々、ここが本当の居場所のような気がしていた。

しかし神様の家とやらは存在しないようだ。こことは次元が違う、と綿は言う。

「さてと。そろそろ戻ろうか。朝になっちゃう」

戻る。現実か、絹の家か……分からないが、綿は上着を返して背を向けた。


「ねぇ。由貴君てさ」

「うん」

「人を殺したいと思ったことある?」


振り向きざま、彼女の黒い瞳が光った。多分、嘘をついてもバレない。

困らないけど、彼女があまりにも真剣な顔をしていたから。

「あまり怖がらせたくないけど」

上着を羽織って静かに頷いた。

「……あるよ。つい最近」

棒読みになってしまったけど、それを聞いた綿はホッとした顔で笑った。

「良かった……」

無垢な少女の顔。邪気なんて一切感じない、とても明るい笑顔だった。


「私だけじゃない……縛られると、皆変わってしまうのね」




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