#10
ここはどこだろう。
呆然と立ち尽くして空を見上げる。入り口のない家、白い柵、薔薇の庭。青く、妖しく光る星。
囲いの外はひたすら高原のようだが、不気味な闇が広がっている。ぞっとするような静けさ。あまりここから動きたいとも思えず途方に暮れた。
司の家の気がするのに、彼は現れない。
「縛られてるのね。貴方も……」
高い声が聞こえた。どこかで聞いた声だ。慌てて振り返ると、柵の外にひとりの女性が立っていた。
「野次馬じゃなかったんだ。由貴君だっけ」
「あ……確か、絹と一緒にいた……!」
目を引く脚線美とベージュの髪。数日前に会った少女、絹の妹……だという女性、綿だ。
非現実的な状況に理解が追いつかない。ここはどこで、どうして彼女がここにいるのか。そんなこちらの心境を察したのか、綿は可笑しそうに口元を隠して笑った。その仕草は上品で、少し絹と似ていた。
「普通は驚くよね。私もそうだった」
「何、何がどうなってんの? これは……夢?」
「夢~……なら良いよね」
「その反応! 夢じゃないんだ! うわ、何何、どうなってんの!?」
「はいはい、落ち着いて。にしても、貴方っていかにも掘られそ……ネコって感じね」
「それは今どうでもいいだろ!!」
とても陳腐に貶されて顔が赤くなる。簡単に乗っかる自分も情けないが、……今の会話でだいぶ緊張は解けてきていた。
深く息を吸い、改めて目の前の女性と向かい合う。頼りなさそうな柵を隔てて、彼女は暗闇の中にぽつんと居た。
「こっちに来たら?」
「駄目、人の家には入れない。そこは貴方の……パートナーの家だから」
俺の、パートナー……。
言い換えるなら、やはり司の家か。でもどうしてそんなことを。
「君も絹も、何か知ってるんだろ。もっと詳しく教えてよ。俺全然事態が飲み込めてないんだ。パニック起こしてないだけ奇跡に近いし」
「知らない方がいいこともあるけどね。パートナーから何も聞いてないの?」
「は……?」
露骨に首を傾げると、綿は怪訝な表情で見つめ返してきた。
「わざとかしら。……まぁいいや、そのあたりは貴方達の問題だからね。私が教えられるのは、ここは例えるなら仮想空間ということ。何をするでもなく目が覚めるまでぼーっとしてるだけ。とても退屈な世界だけど、ここが本当のFREE CITY。……だと思う」
遠くの星が赤くなったり青くなったり、時間によって色を変える。
これは夢じゃない。鮮明な色が易しく説明してくれていた。




