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Free City  作者: 七賀ごふん
Inside

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58/82

#10



ここはどこだろう。

呆然と立ち尽くして空を見上げる。入り口のない家、白い柵、薔薇の庭。青く、妖しく光る星。

囲いの外はひたすら高原のようだが、不気味な闇が広がっている。ぞっとするような静けさ。あまりここから動きたいとも思えず途方に暮れた。


司の家の気がするのに、彼は現れない。


「縛られてるのね。貴方も……」


高い声が聞こえた。どこかで聞いた声だ。慌てて振り返ると、柵の外にひとりの女性が立っていた。

「野次馬じゃなかったんだ。由貴君だっけ」

「あ……確か、絹と一緒にいた……!」

目を引く脚線美とベージュの髪。数日前に会った少女、絹の妹……だという女性、綿だ。

非現実的な状況に理解が追いつかない。ここはどこで、どうして彼女がここにいるのか。そんなこちらの心境を察したのか、綿は可笑しそうに口元を隠して笑った。その仕草は上品で、少し絹と似ていた。


「普通は驚くよね。私もそうだった」

「何、何がどうなってんの? これは……夢?」

「夢~……なら良いよね」

「その反応! 夢じゃないんだ! うわ、何何、どうなってんの!?」

「はいはい、落ち着いて。にしても、貴方っていかにも掘られそ……ネコって感じね」

「それは今どうでもいいだろ!!」

とても陳腐に貶されて顔が赤くなる。簡単に乗っかる自分も情けないが、……今の会話でだいぶ緊張は解けてきていた。

深く息を吸い、改めて目の前の女性と向かい合う。頼りなさそうな柵を隔てて、彼女は暗闇の中にぽつんと居た。


「こっちに来たら?」

「駄目、人の家には入れない。そこは貴方の……パートナーの家だから」


俺の、パートナー……。

言い換えるなら、やはり司の家か。でもどうしてそんなことを。

「君も絹も、何か知ってるんだろ。もっと詳しく教えてよ。俺全然事態が飲み込めてないんだ。パニック起こしてないだけ奇跡に近いし」

「知らない方がいいこともあるけどね。パートナーから何も聞いてないの?」

「は……?」

露骨に首を傾げると、綿は怪訝な表情で見つめ返してきた。

「わざとかしら。……まぁいいや、そのあたりは貴方達の問題だからね。私が教えられるのは、ここは例えるなら仮想空間ということ。何をするでもなく目が覚めるまでぼーっとしてるだけ。とても退屈な世界だけど、ここが本当のFREE CITY。……だと思う」

遠くの星が赤くなったり青くなったり、時間によって色を変える。

これは夢じゃない。鮮明な色が易しく説明してくれていた。




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