#9
司じゃないと駄目。
司と居ないと駄目。
切羽詰まった金切り声が脳内に響く。彼を求めろと指示が入る。それに従わないと強い頭痛に悩まされた。
部屋の天井を見上げながら、小さく息をつく。
「ね……司さん」
「何?」
「神様の家に侵入できたら……俺達も、死ぬまで一緒にいられるんですかね」
心にもない言葉だった。侵入したいとも、成功したいとも思ってない。なのに何でこんなことを口走ったのか、自分で自分が分からなかった。
もしかしたら、司の反応が見たかっただけかもしれない。
でもやっぱり、知らない方が幸せかもしれない。
平凡な日常なのにどこか狂ってて、得体の知れないレールの上を歩かされている。
俺達はそんな街で生きている。
飛ぶ。
落ちる。……イメージをしたとき、脳裏に見覚えのない残像が現れた。
青い発光、横に広がるホールのような空間、パソコンと黒のUSB、それを抜き取る手。
「ひっ……あ」
その手は見覚えがあった。滑らかな曲線、骨ばった甲。司の手だ。
「由貴君?」
息が苦しくなる。喉が締まったら、繋がっている部分もきつく締まってしまった。苦しいけど気持ちいい地獄の時間。自分の名を呼ぶ声が遠くで聞こえていたけど、気にする余裕もなく意識が途切れた。
『聞いて……』
白一色の視界が次第に色付く。戸惑いながらも周りを確認すると、夜空の下、大きな家の庭にいた。
何となく司の家を彷彿とさせた。立派な建物の造りに、小さな薔薇のアーチ。空は暗く、無数の星が瞬いていた。家の敷地に入ってしまっていることは確かだけど、何故か玄関が見つからない。裏手に回っても、家の周りを一周しても入り口がなかった。




