#8
「由貴君、また何か隠し事してるね」
「えっ」
絹に会った夜から、今日で七日目。仕事終わり、レストランで司と食事をしていた由貴は肩を震わせた。
「か、隠し事なんて何にも……」
「そんなに目が泳いでるのに?
司はパスタを器用にフォークに巻いて口に運んだ。由貴はそんな司から視線を逸らし、スパークリングワインを飲む。少し炭酸が抜けてしまっていた。
「隠してるわけじゃないんですけど、その……稔のことが気になっちゃって。あ、気になるってそういう意味じゃありませんよ!? 単純に無事かどうかっ……安否確認って意味です!」
必死だ。あらぬ勘違いをされたら困ると、身振り手振りで訴える。それを見た司はお腹が痛そうに笑い続け、落ち着いてから「わかってる」と呟いた。
「稔君のことは俺も聞いた。捜査はしてるけど、行方不明者が多過ぎて手が回らないっていうのか現状だろうね」
「そうそう、それですよ。思ったんですけど、一回廃人を全て保護して、それからじっくり身元確認していけば良いんじゃありませんか? そしたら失踪した人がわんさか見つかると思います」
「網にかける感じか。良いと思うけど、政府は極力見ないふりだから……あまり期待はできないかな」
食事を終え、冷たい空気の外に出る。星は見えない。ずっと遠くに赤く光るタワーが聳え立ち、存在感を放っていた。あそこは電波塔でもあり、この街の要だ。自分達にとっても大事な心臓部分。
「あそこから飛び降りたら、さぞ気持ち良いだろうね?」
由貴の視線に気付いた司が微笑みながら首を傾げる。
彼の不幸になりたい病は依然変わらず。いつも爆弾が落ちてないかと目を光らせている。
「ははっ。そういえば最近飛び降りてません。頭の中で」
「由貴君にとっては良いことだ」
暗い夜道。オレンジ色の電灯が直線的に並んでいる。歩いてる途中手が触れて、自然に繋ぎ合った。
「そうですね。でも、たまには飛び降りたい……」
「……」
肩に回されていた手が後頭部へ移る。軽い力で引き寄せられ、彼に唇を塞がれた。
前のめりになっても身長差がある為、つま先立ちでキスを続けた。気持ち良い。脳みそまで溶かされそうな快感だった。
「司さん。触れたい……です。できれば、すぐにでも」
「大胆」
最近仕事が詰まっていたせいか、欲望は寝静まってるように感じた。ところが司と会った瞬間、醜い欲望が起き上がったのだ。抑え込んでいた熱が全身を侵す。
家まで待てず、結局ホテルで一夜を明かした。




