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Free City  作者: 七賀ごふん
Inside

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55/82

#7



決して穏やかな気持ちでいられない。


しかし絹の言葉は聴く者を黙らせる、見えない力があった。決して高圧的な嫌なものではない。とても自然に、心の繊細なところに澄み渡る声を持っている。

「君……じゃなくて、……貴方は……何を知ってるんですか?」

「何にも。結局、肝心なことは何も分からなかった。成功したけど、酷い罰だけ与えられた」

「成功っ?」

「私は神様の家に侵入したの」

な……。

言葉を失って彼女をまじまじと見た。

また悪い冗談、と笑い飛ばすことはできなかった。一瞬……本当に一瞬だけ、彼女の横顔が大人の女性に見えたからだ。

幻覚かもしれない。疲れてるか、若しくは逆に興奮してるんだと自身に言い聞かせた。しかし詳しいことを訊く前に高いヒールの音が背後から聞こえた。


「絹、こんなところにいた。もう、何で電話に出ないの!」

「綿。ごめんね」


腰に手を当て、絹に文句を言うミニスカートの女性。髪は薄いベージュ系……どことなく、絹に似ている。

「由貴君、私の妹よ」

「え……えっ!」

絹の言葉に驚愕し、もう一度見返す。すると綿と呼ばれた女性は呆れ顔でため息をついた。

「信じるわけないんだから、その紹介やめなって。頭おかしい人扱いされるだけでしょ? 学習しないなあ」

「そうね。でも、由貴君は神様の家に興味があるみたいだから」

「へぇ……」

彼女はずい、と身を乗り出して由貴の顔を見つめた。

「野次馬根性じゃないの?」

「ち、違います」

揃いに揃って何とも失礼……いや、マイペースな姉妹だ。


これ以上振り回されたら適わない。鞄を抱え直すと、絹はケースの中から名刺を一枚取り出した。

「もし気が向いたら、またお話しましょう。でも私達今月でこの街を出るつもりだから……多分、ここではもう会えないと思う」

一応名刺を受け取る。

「私達は死ぬまで一緒だろうけど……由貴君の大事な人が見つかるように祈ってる。じゃあ、さよなら」

絹は今まで見た中で一番優しく笑った。そして綿の手を取り去って行った。

解放されてホッとした気持ちと、もう少し詳しく話してみたい気持ちが対立していた。彼女……絹は、神様の家の正体を知っているのかもしれない。念押しして警告してきたのは、迂闊に手を出してはいけない存在、パンドラの箱だから。


分かってる。今やこれだけ街を騒がせているんだ。そしてそれは原因不明の奇病などではなく、人為的なものの可能性もある。麻薬なんて一番考えられる線だ。……とすると、やはり敵はパソコンの向こう側にいる。




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