表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Free City  作者: 七賀ごふん
Inside

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/82

#6



「私は絹。良かったら貴方の名前を教えて」

「花岡です」

「下の名前は?」

「由貴」

オレンジジュースをぐっと飲み干す。

「早く飲んで、帰った方が良いと思う。嫌味で言ってるんじゃなくて、遅くなれば遅くなるほど廃人が増えるから」

「それなら何で貴方はあそこに居たの? あそこは廃人達の巣窟よ。……無防備でお散歩しに行く場所じゃない」

彼女がたまに揺らすウィスキーの氷が、小気味良い音を立てる。

「捜してる人がいるんだよ」

「あら、廃人で? じゃあ同業者さんかしら」

「よく知ってるんだね」

「えぇ。私もそうだもの」

それは悪い冗談だ。思わず大袈裟に吹き出してしまった。

「君、どう見ても学生でしょ? じゃあ何、フリーランス? 相当な技術者かな」

「どうせ言っても信じて貰えないだろうから……。こんな姿になっちゃったことなんて」

彼女の話についていけない自分がいた。しかし、何故だか惹き付けられる。彼女自身に明確な興味を抱き始めていた。

ただの大人ぶった子どもや、頭のおかしいホラ吹きじゃない。


自分では到底推し測れない何かを感じ、彼女を見つめる。

「信じる。どんな話しても信じるから教えてほしい」

声を潜め、絹の背もたれに手を置く。

彼女は少し考えていたが、やがて小さく微笑んだ。

「フリーよ。全部独学で勉強して来たの。私は今二十八歳……でも身体は十四歳くらいかな。月毎に若返ってしまっている。どう? 驚いたでしょ」

「驚いた」

「当然よ」

彼女は髪を後ろに払う。

「神様の家のこと知ってるでしょ? あれについてどう思ってる?」

彼女の瞳に妖しい色が灯る。由貴は空になったグラスを前に押し出した。


「吐き気がする。本当でも冗談でもね」


席を立って、彼女の分も支払った。彼女は「ありがとう」と微笑み、小さな手をひらひらと泳がせる。


「お友達が廃人になっちゃったのね?」


二人で店を出て、駅の方へ向かう。

「友達……とは少し違う。ただ、気になる人がいなくなった。神様の家が絡んでるのは確かで、何とか捜して見つけてやりたいんだ」

「そう。……お気の毒に」

絹は細い髪を指に巻き付けた。

「でもやめた方が良いわ。解析に失敗したら貴方が廃人になるもの。それにその人のことも忘れるべき。大事な人の壊れた姿を見るのは、辛いでしょ」

少女は真っ白なワンピースを揺らす。会った時からずっと感じていた違和感の正体が分かった。


中身こそ違うのかもしれないが、そういえば久しぶりにこの街で見た……子どもだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ